白樺峠でタカの渡りを見よう 観察ガイド  2,006年9月    目次に戻る

                                                    
 わが国で最大のタカ渡りの観察地である白樺峠。  9月に入ると一度は行ってみたいと大勢の方が思っておられるだろうが、
これまで行ったことの無い人にとっては現地の様子や時期、装備についてわからないことがたくさんあると思う。
 私は本年初めて白樺峠を訪れた。 何日ごろが良いのか・・・昨年の記録などを参考に9月26・27日を選んだが、26日は到着
したころから雨で翌日は晴れたが天候には恵まれなかったことと、21日に5,000羽を超えるたくさんのタカが通過したことから
遅きに失した感があって少数のタカしか見られなかった。
 
 その点では残念であったが暇がたくさん有ったので色んなことを教えてもらえたのは一つの成果だった。
これから記載することは何回も行った方は御存知のことばかりだが、これから(来年以降)行ってみようという人には参考になると
思うので最適の時期を推理してたくさんのタカとの出会いを楽しんでいただきたい。
 また、行く予定の無い方には現地の雰囲気を少しでも味わっていただければと思うものである。

場所  
 松本市奈川  上高地・乗鞍スーパー林道 白樺峠(標高1,600m)
 
標高が高いので平地よりも気温は10℃くらい低くなる。  防寒着は必要である。
 
白樺峠にスーパー林道の料金所があり(小型車860円)、料金所の前後に駐車場が用意されていてどちらからでも観察広場に
 行くことが出来る。 奈川方面(名古屋方面)から行った場合は料金所の手前に車を停め、観察後に引き返せば料金を払わなく
 てもすむことになる。


観察できるタカの種類
  基本的にはサシバで70%近くを占める。  ここ数年の記録を見ると8,000羽から多くても9,000羽まで。
 次に多いのが
ハチクマで2,000〜3,000羽。 ノスリが2,000羽くらいで年によってはハチクマより多い年がある。 
 ついで
ツミが1,500羽くらいになることがあり、この4種類で大部分を占めるのでこれらの識別をしっかり覚えよう。 
  他に
ハイタカ、ミサゴ、トビ、オオタカ、ハヤブサ、チゴハヤブサなど。  


時期は何日ごろが良いか
  
9月に入るとぼつぼつ飛び始めるが10日頃から増え始める。 年によって状況は変わるが15日前後に一度1,000羽を超えるピ
 ークがあり、その後20日から月末にかけてピークがあるが年変動が激しいので予測は難しい。 
  雨の日は飛ばない。 曇りの日は数が少ない。
  雨が続いた後の晴天初日は風が強いので飛びにくいようだが、長雨が続くと晴れるのを待ちかねていたようにたくさん飛ぶこ
 とがあるので要注意。  基本的には雨の翌々日からが良いようだ。
  白樺峠を通過するサシバは9,000羽以下がほとんどであるが、今年は20日から23日までの4日間までに9,000羽を超えてしま
 ったので例年ならまだ飛んで良さそうな26日以降にはシーズンが終わってしまった感があった。
  年によって変動が大きいのでネット上に公開されている「信州タカ渡り調査研究会」の速報と天気の推移と天気予報を見計らっ
 て出かける日を決めたい。 
  夏休みが終わって紅葉が始まる前のこの時期は比較的宿が取りやすいので日程を決めやすい。


時間は何時頃がいいか
  朝の8時頃から近くで宿泊していたタカが飛び始めるそうだ。  この時は比較的近くを通るので写真を撮るならこの時間帯が
 良い。 この時間帯に飛び立った個体は昼頃に岐阜・金華山や明神の森付近を通過するものと思われる。
  たくさんのタカが見られるのは昼ごろからで、近くを通るものもいるが写真距離よりも遠くを飛ぶものが多い。
 名古屋方面から行くなら朝方出発、昼過ぎに着いて渡りを観察後宿泊。 翌日は朝から写真を撮る・・・のが良いかもしれない。


宿泊
 私は乗鞍高原に宿をとった。 ここは温泉があって白く濁った硫黄泉だった。 嬉しかったのは常に浴槽に熱いお湯が注がれ、
溢れた湯は洗い場の排水と一緒になって流れてゆく。 つまり溢れたお湯は惜しげもなく捨てられて循環する事は無い訳だ。 
源泉掛け流しというやつだろうか・・・乳白色の湯はかなり色が濃かった。 
 乗鞍高原に泊まる時に奈川方面から行くと料金所を通過するので林道の通行料がいる。 他には奈川温泉や白骨温泉がある。
 白骨温泉は乗鞍高原より遠く、通行料金として別途420円がかかる。

 また、現地駐車場で車中泊の人もいるようだ。 幸いにも駐車場の近くにトイレも用意されているが、クマが出没することもあるら
しいので特に夜間は注意が必要だ。


食料
 近くで一番賑やかなのは乗鞍高原だがコンビニは一軒も無いのでホテルで宿泊した場合は翌日の昼食に困ることになる。
宿に交渉して弁当を作ってもらうといいが、私が宿泊したホテルでは断られた。  事前にパンなどを用意して朝食とし、宿には早
立ちするから・・・と朝食をおにぎりにしてもらってそれを昼の弁当にする手もある。
 私はパンの用意が無かったので観光センターで売っている笹寿司を買ったが、販売開始は8時半なので白樺峠到着に若干遅れ
をとってしまった。  他におにぎりも売っている。 おやつは下から用意していった方が良かろう。

たかみの広場
 左の写真は奈川から行くと料金所を通り過ぎてすぐの所の駐車場からの登り口で、緑色のポールの奥に向かって登ってゆく。
15〜20分くらいの登りの最初の方にややきつい登りがある。 白樺の林の中ではアカハラやカラ類を観察した。
 登ってゆくと右の写真の右手・・・女性が二人歩いている付近に出る。

 この場所はタカ渡り観察用に奈川村が樹木を伐採して作ったもので、切り倒した材木でベンチや腰掛が作られていた。 かなり
広くて2〜300人は入れると思う。  簡易トイレが用意されている。  場所柄大切に使わせていただこう。



注意事項を書いた看板が入口にあるのでよく       売店も設置されていて参考資料や参考書を販売している。
読んで守ろう。 火気の使用は禁止されている。



さあ観察しよう
 たかみの広場に立つと眼前に写真のような光景が広がる。 
 右の地図の左側に上下に赤線で示した部分の交点に白樺峠があり、写真に写っているのはそこからの視界の左半分で北東
方向を見ていることになる。 

 地図の水色でY字型の部分は奈川渡ダムを中心とした安曇三ダムでYの左側は梓湖と呼ばれる。 
写真正面の山塊は梓湖対岸の無名峰(1,880m)の連なりでタカはこの上を超えて北東方向から飛んでくる。 
 山塊が右に落ち込んでV字型になった底に奈川渡ダム(地図上では赤い長四角)があり、右上に伸びた水路の奥の方には松
本平が見えている。 

 前方の山に雲がかかるとタカはここを超えようとせずほとんど渡らないが、一部はV字型の谷に沿って渡ってくる。  たくさん渡
る為にはこの山が見えていることが条件になる。
 山を越えたタカは白樺峠の左側に流れ、右側に流れるものもある。 右に流れるものは逆光になるので写真を撮るには適さない。
 こうして白樺峠の近くを越えたタカたちは南西方向に流れてやがて岐阜の金華山から伊吹山の間を通って琵琶湖にいたり、
関西のタカ渡りの名所・琵琶湖の南の岩間山方面を通るものと見られるがこの頃にはかなりばらけているようだ。
 ちなみに、ハチクマは九州から中国大陸に渡って海岸沿いに南下し、マレー半島からインドネシアを通って最終的にはフィリピ
ンのミンダナオ島に至るそうだ。 島伝いに直接行けば3,000qの距離を大回りのコースは12,000kmの壮大な旅である。


終わりに
 現地で聞き、見たことなどを纏めてみた。
 たかみの広場を管理しているのは「信州ワシタカ類渡り調査研究グループ」の人たちで、文一出版から「タカの渡り・観察ガイド
ブック」という書籍を出しておられる。 大いに参考になるのでより深く白樺峠を知りたい人には一読をお勧めする。

 研究グループの中に仙人と呼ばれる方がおられる。 売店付近でいろいろ説明しておられるお方にお名前を伺ったら中村さん
と名乗られて名刺もいただいた。 仙人というかたがおらるそうですが・・・と聞いてみたら本人さんだった。
なかなかの好漢で人懐こくいろいろと教えていただけた。  見かけたら是非とも声を掛けていただきたい。  深謝。