セイタカシギの繁殖観察記    2,008年11月     目次に戻る
                                                   2,009年7月

  2,008年の夏、セイタカシギの繁殖を観察する貴重な機会が有ったので観察記をまとめた。  
  また、2,009年の夏には四日市市の石原地区の埋立地でセイタカシギの繁殖が確認された。

*プロローグ 
  四日市市の港湾に面した未利用の埋め立て造成地で数年前からコアジサシが繁殖している。 
  6月6日、許可を得て立ち入り禁止の埋立地に調査に入った日本鳥学会と野鳥の会のメンバーは複数のセイタカシギを見かけ、
 繁殖の可能性が有るとして6月11日に再度調査に入って2ツガイのセイタカシギが抱卵しているのを確認した。
  観察は野鳥の会の安藤さんが継続して行うことになり、私も週に一度程度の割で観察の機会を頂いたので子育ての経過を記録
 として残すこととした。なお、観察は大部分が車内からのものである。
  埋立地の入口にはゲートが有り、ドアには施錠されて許可を得ないと入れないようになっている。

*繁殖の環境
  埋め立て造成地の未利用部分の広さは約20haと広大である。 埋め立て土砂には粘土質の土も含まれており、粗く整地さ
 れているので所々雨水が溜まって大小の池が点在し、梅雨時にはその1/3くらいが池と湿地になる。
  写真で見られるとおり葦などの植物が点在し、池にはリュウノヒゲ藻などの水草が茂っていた。
 
  埋立てられてから数年と日が浅く、埋立地の外はコンクリートで固められている。  流入河川が無い環境なので蛇やイタチ猫
 など鳥たちにとって危険な動物がいない反面、サギなどの餌となる魚類や両生類もいない。
  ここで餌になるのは水草や水生昆虫で、セイタカシギはヤゴや大小のゲンゴロウなどの水生昆虫を食べていた。
 
  天敵がほとんどいない鳥たちには楽園の環境でセイタカシギだけではなくカルガモ・カイツブリ・バン・シロチドリ・コチドリ
 ・コアジサシ・ケリなどたくさんの鳥たちが子育てしていた。  
  たまたまハヤブサが現われて突っ込もうとしたことが有ったが、ケリを始めとしてここで子育てしている鳥たちが一斉に飛び立っ
 て共同で追い払っていた。 
  もっと厄介なカラスの姿も見かけたが、身を挺して協同で防御に当たる親たちの力と、他に餌になるゴミなどが無いせいもあっ
 て次第に見掛けなくなった。   他所に良い餌場が有るのだろう。
  
               


*6月11日(水)
  
再調査に入った安藤さんは2つがいのセイタカシギが抱卵しているのを確認した。  卵の数は夫々4個づつ。
 鳥たちは一日に1個づつ卵を産んでいって全部揃ったところから抱卵を始め、セイタカシギは22〜25日で孵化する。
  抱卵開始日はわからないが、遅くとも7月6日までにヒナが誕生する見込みだ。  

*6月16日(月)
  初めて現地に入れてもらった。 人っ子一人いない広大な敷地に池が点在して湿地が多く、葦を始めとした植物がたくさん
 生えている。   海岸沿いの道路から埋立地を両断する道路にゆっくりと車を入れていくと道路沿いの池を越した近いと
 ころと、そこから30mほど離れた二つの場所に巣があった。道路から近いほうが30mくらいで遠いほうはその30m先だ。 
 遠い方を
Aの家族・近いほうをBの家族と区別していると教えてもらった。  

  最初に行った時は二つの巣とも親はおらず卵も見えなかったので巣の位置はわからなかった。  静かに待っているとやがて
 親が戻ってきて巣の上に座り込んだが、長居はせずに短時間で離れてゆく。  雌雄が交代しながら連続して暖めるものと思っ
 ていたが、気が向いたら暖めに行くラフなもので雌雄交代が不規則など驚きだった。
 日中は暑い太陽が照り付ける。  卵を覆い隠すことで熱くなり過ぎるのを防ぎ、夜は温度が低くなり過ぎないように真面目
 に暖めるのだろうか。 そんなことを想像した。
  観察中、シロチドリ・コチドリ・コアジサシなど同じように卵だけ転がって親が不在の巣が多かった。  水鳥一般はこん
 な暖め方をするのだろうか。 私は気付かなかったが、抱卵に入るときには毎回丁寧に転卵していたそうだ。

  
                              
Aの家族  左が♂で右が♀。 
            


                         
 Bの家族  左が♀で右が♂
            

 

          60m先にある
A家族の巣                 B家族の巣は30mくらいの近さ
   



  
どういう意味があるのか判らないが、♂どうしに♀も絡んでよく4羽が争う光景が見られた。 縄張り争いをしている
 ようでもなく不思議だった。 撮ってきた写真を見ると
の♂がの♂に攻撃を仕掛けることが多く、飛び上がっては
 縺れあっていた。 これは次の6月25日に行った時にも見られた。
   写真・・左下で走っているのは
の♀、空中で飛び蹴りを掛けているのがの♂、下にいるのがの♂である。
             



*6月25日(水)
  前回から9日目。  相変わらずのんびりと暖めていて巣をあけている時間が長い。 親の姿が近くに見えない間に
そっと
B家族の巣を撮らせてもらった。  卵の寸法を測る準備はしていなかったのでサッと撮って戻った。
  安藤さんにお聞きしたところ4cm×3cmと鶏卵よりかなり小さく、鳥の大きさからみて意外に小さい印象だ。
  巣はご覧のとおり草の茎と砂利を寄せ集めただけの乱雑なもので、水没しない小高い場所を選んで作ってあった。
  Bの巣に卵は4個有ったがAの巣も4個とのこと。  4個がセイタカシギの標準の産卵数なのだろう。
             


*6月29日(日)
  両ファミリーともヒナが誕生。 6月11日に抱卵が確認されてから18日目の誕生だった。逆算すると生息が発見
 された6月6日頃から抱卵に入ったものと推察される。

*7月2日(水) 生後3日目
  生後3日目のヒナとの初めての対面はわくわくだった。生まれたては目が開かず親が運んでくる餌をひたすら待つ小鳥た
 ちと違ってセイタカシギの子供たちは逞しく、誕生から僅か3日目でもう親から離れて自在に歩き回って餌を探していた。 
 親たちは警戒しながら見張っていたが、子供たちは勝手にあちこち行ってしまう無防備さだった。
 
   まだ産毛に覆われている
Bの家族のヒナたち・・・嘴が大きいのと脚がごっつく感じられるのが印象的だった。
     


   
Bの家族の父親の胸元に2羽のヒナが隠れて脚だけ
   見えている。  甘えているようで可愛かった。             こちらも
Bの家族の父親とヒナ
    

 
  Bの家族は巣の近くの水溜りを縄張りとして行動し、Aの家族は観察している道路を挟んだ反対側の水溜りに移動してきていた
 のでどちらも近くで観察出来るようになった。
      
Aの家族のヒナが葦の間で餌を探している。        こちらはAの家族の子供たち4羽
    


   これは
Bの家族の子供のうちの1羽。  トリミングしてアップにしてみると産毛が生え揃っていないように見えるが、これでも
  親の元から離れて水の中を餌を探して歩き回っていた。
             



*7月9日(水)  生後10日目
  前回から1週間経ってどれくらい大きくなっているか楽しみだった。  1ヶ月で巣立ってしまうのでかなり大きくなっているものと
 思っていたが、少ししっかりして脚が長くなっているものの体が大きくなった印象はなかった。 この時期の生長はとてもゆっくりだ。 
    
   
    


  
 Bの家族の孵化後の空き巣を見てきた。 私の親指と人差し指の長さ16cmから推定すると直径が25cmくらいの
 巣で、この上に4個の卵が並んでいたことになる。 本当にちっちゃな巣だ。  卵の殻は見当たらなかった。
             

  この日、
Bのヒナは4羽確認できたがAのヒナが2羽しか確認できなかった。繁殖中のセイタカシギにとって一番
 危険なのは抱卵中よりもヒナが勝手に歩き回る幼少期だろう。 こんな時にカラスやハヤブサに襲われたら親にはど
 うしようもない。 
 2羽犠牲になったものとがっかりしたが、観察場所から見えない場所にいたらしく、後日4羽健在ということがわ
 かってほっとした。
  


*7月22日(火)  生後23日目
  振り返ってみれば1週抜けてしまったのが残念だったが、生長がゆっくりだったので1週あけて13日後に行ってみた
 らヒナたちは8羽揃って立派な幼鳥に生長していた。 産毛に代わって幼羽が生えそろい、30mほども飛べるそうだ。  
  幼羽にしっかり覆われた体の風切羽の伸び具合がどうなっているか・・・羽を伸ばしている写真や、親との大きさの
 比較のためツーショット写真が欲しかったがどちらもチャンスに恵まれなかった。
     

     


  12日間見ない間の生長は大きかった。 30mも飛べるようになると巣立ちは近い。誕生から1ヶ月くらいで親と同じ
 くらい飛べるようになるそうだからあと10日もすれば巣立ちだろう。 
  長く日照りが続いて池が無くなったり小さくなって生息範囲が狭められている。他にも子育てしている鳥たちがいるの
 で準備が整えば旅立ってゆくかもしれずその日は近付いていると思われた。


*7月31日(木)  生後32日目
   これが見納めかもしれない・・・と思いながら行ってみたら姿が見えなかった。 一段高くなったところにも池が有る。 
 車では行けないのでそーっと歩いて上がっていったら12羽揃って移動してきていた。
  下の池から100m以上離れており、幼鳥たちが歩いて行ける場所ではないので飛んで行ったのだろう。 
     

  上の池には400oレンズしか持ってゆかなかったので許される距離まで近寄らせてもらったが、30mほどの所で
 やはり飛ばれて下の池に戻っていった。 
  下の写真の左は成鳥で右は幼鳥。  幼鳥はまだ風切羽が伸びきっておらず初列の先端が丸いが、体が小さいので
 これくらいなら親と同等に飛べそうだ。  産毛に覆われていたヒナたちが短期間でよくこれまで生長したのだ。
     
 
   無事に下の池に戻るとリラックスして遊びだしたが親は警戒のポーズを緩めておらず子供たちに付き添っていた。
   幼鳥たちは生後1ヶ月で飛べるまでに大きくなったとは言え親と比べるとかなり小さい。
     

 
    近くから見ると脚の長さは十分だが嘴が短く初列風切羽が尾羽を超えていないなどまだかなり短い。 
   それにしても、大したものを食べているとは思えないのに僅か1ヶ月でこの大きさにはびっくりだ。
   餌はよほど豊富に有り、また摂取効率も良いのだろう。  
     



*8月4日(月)  生後36日目
   8月1日以降に旅立ったのだろう。  1羽も姿が見えなかった。
  無事に8羽のヒナが育ち、立派な若鳥となって巣立っていったのがなによりだった。

  セイタカシギは東京湾の周辺や愛知県の三河湾沿岸で毎年定期的に繁殖しており、他の場所でも不定期に繁殖している。
 三重県では松阪市の雲出川河口周辺の池で越冬するセイタカシギが毎年観察され、幼鳥が混じるなど繁殖している可能性
 があるがこれまできちんとした記録が無かった。
  今回は安藤さんが定期的に繁殖を観察され、貴重な記録が残されて私も便乗させてもらった。

  セイタカシギがここを繁殖場所として選んだ理由を考えてみると
 1、ゲートのある立入り禁止地域なのでほとんど人が入らなかった。
 2、埋立地の周辺が海とコンクリートに囲まれており、流入流出河川が無いため外敵となる危険な動物がいなかった。
 3、埋め立て土砂に保水力のある粘土が混ざっていたため適度に池や湿地が点在して自然環境を作り出し、数年の未利用
   は長いとは言えないが葦などの植物が繁茂するには十分で、水生昆虫も繁殖して餌が豊富だった。
 4、コアジサシ・コチドリ・シロチドリ・ケリ・バン・カイツブリ・カルガモなどたくさんの鳥たちがここで子育てして
   いた。
   多分、たくさんの鳥たちが子育てしているのはセイタカシギの親に安心感を与えただろう。 
   カラスやハヤブサなどの敵が襲ってきた場合でも協同して敵に当たることが出来た。
   と言ってもバン・カイツブリ・カルガモなど動きの鈍重な鳥たちよりコアジサシやケリの活躍が目立ち、セイタカシギ
   も長い脚からは想像できない小回りの効いた機敏な飛翔で強敵に立ち向かっていた。
   
 *不思議だったのは動物食のカイツブリがこの環境で子育てしていたことだ。  飛行の下手なカイツブリが外部に魚を獲
   りに行くとは思えないので水生昆虫を餌にしていたと思われる。セイタカシギより小さいことを考えれば子育てには十
   分な水性昆虫がいたということで不思議ではないのかもしれない。

*ファミリーのその後 9月13日
   8月18日に松阪市の五主海岸沿いの池に2羽の成鳥に引き連れられた4羽の幼鳥を含む6羽のセイタカシギが降り立っ
  た。 ♂成鳥=父親の頭が白いことから
Aの家族と見られるこの一家はすっかり池に落ち着いてしまった。 
  四日市から飛び立ったファミリーの行き先は南に向かうか東に向かって三河湾に行くかどちらかだろうと想像していたが、
  
Aの家族は南に向かった。  Bの家族の行方はようとしてしれないが、元気でいてくれるものと願いたい。

   9月13日にやっと
Aの家族に会いに行くことが出来た。 あのファミリーが・・・と感無量だった。
   一番右にいるのがお父さんで右から3番目がお母さん。  あとの4羽が子供たちでもう親たちと変わらぬ大きさですっかり逞
  しくなっていた。
             


  拡大してみたら鱗のような細かい幼羽はすっかり減って第1回の冬羽への換羽が進んでいた。  茶色かった頭の色が目の辺
 りまで黒くなって幼鳥の面影が薄れている。  顔の上半分が黒いのはどちらの親にもない形質である。
  どの子供たちにも見られることから若鳥の特徴かと思ったけど図鑑を見るとそうでもない。  初列風切羽はしっかり伸びて尾羽
 を超えた。  もうすっかり一人前だ。
             



*ファミリーのその後  10月18日
  ファミリーはそのまま池に居ついて時々別の池に行ったりしながらすっかり落ち着いているので前回から1ヶ月ぶりに訪ねてみ
 た。  時々オオタカが現われるようでファミリーにとっては危険な相手だ。
 
  子供たちの冬羽への換羽が進んで母親との識別が難しくなって見ただけではわからなかった。 父親は羽が真っ黒なので容
 易にわかるが、子供たちの第1回冬羽と♀成鳥は羽が褐色でとてもよく似ている。 
 脚の赤いのが成鳥かと思ったがそうでもなく、幼鳥は各羽の縁がバフ色になっていることで識別した。

     手前は成鳥♂で向こう側は幼鳥とはっきりわかる。    一番右側は脚が赤いので♀成鳥かと思ったが、背
                                         中の羽全体の縁がバフ色をしているので幼鳥だろう。
    

   家族集合写真が欲しかったがなかなか6羽揃って並ん    これは成鳥の♀と思う。  目一杯トリミングしたので
   でくれなかった。  先頭はお母さんで次はお父さんか。    わかりにくいが羽縁にバフ色はない。
    

 
*ファミリーのその後  11月23日  ヒナ生誕4ヶ月24日目
  前回から1ヶ月ぶりの訪問となった。  父(♂成鳥)は子育て中は頭が真っ白だったが、頭から首の後にかけて黒くなってきて
 いた。  母(♀成鳥)は幼鳥と酷似しており、識別の目安は脚の色が父と同じく特別赤いこと。
             これはお父さん(成鳥♂)                 こちらはお母さん(成鳥♀)     
    

  一家の集合写真。  この池は鳥たちまでの距離が遠いので写真が撮りにくく、やっと撮った写真は葦が被ってしまった。
  一番右にいるのがお父さんで手前にいるのがお母さん。 あとの4羽は子供たち。
  こうして並べてみると成鳥と幼鳥の羽の違いがわかる。  幼鳥は羽縁のバフ色のせいで成鳥の♀とは印象が違って見える。
  成鳥はのっぺりしている。   この段階では幼鳥たちの性別はまだわからない。  雌雄何羽づつか楽しみだ。
             
 

 
*ファミリーのその後  12月20日  ヒナ誕生から5ヶ月21日
  12月の初旬頃からヒナが1羽行方不明になってしまった。  家族の結束を見ていると1羽だけ離れて放浪の旅に出たとは考
 え難い。  定住していた池にオオタカが2羽出没していたので犠牲になったか、それとも他のアクシデントが有ったのか・・・今日
 は工事が行なわれていて人の影がいつも間近にある堤防沿いの池に移っていた。 
  1羽欠けたのは残念だが、これも自然の掟か。  無事なら戻ってきてほしい。 
 
                 5羽の家族の集合写真  一番左がお父さんで真ん中がお母さん。  
             


  左はお父さんで右はお母さん。 成鳥の♀は子供たちより脚が赤いことと、今回虹彩の赤味が強いのに気付いた。 この写
 ではわかりにくいが横から見ると真っ赤に見える。
  成鳥の♂はますます頭が黒くなったが、繁殖時期になったらまた白くなるのだろうか。
    


  左は幼鳥で右は成鳥の♀。  11月23日に撮った写真は遠かったので羽縁までははっきりしなかったが成鳥♀と並んでいる
 のを見るともやもやとしているのでバフ色が残っている。
  この幼鳥はバフ色が見えない。  12月2日に見せていただいた第1回の冬羽写真はこの個体と思われる。
  そして、成鳥の♀と比べると黒っぽい羽が見えるので♂と推察した。  ♀は虹彩の赤さがよく出ており、幼鳥はこれほどはっき
 り赤くないことから識別できそうだ。
              


  次の写真は上の写真の右半分を拡大したもので右の2羽は幼鳥である。  上の個体は羽縁に若干バフ色が残っているが、
 下の個体は左の成鳥♀とほぼ同じように見えるので♀と判定した。  上の方は♂か♀か悩ましいところだ。
  2羽の幼鳥とも虹彩の色は黒っぽく、脚の色はカーキ色をしている。
             



*ファミリーのその後  2,009年2月2日  ヒナ誕生から7ヶ月と3日

  5羽の集合写真。 真ん中が成鳥♂のお父さん。 左端が成鳥♀のお母さん。 お父さんと子供たちが活発に動き
 まわるのに比べてお母さんは思慮深くいつも考え事をしている。 こうして集合写真を見るとお父さんの黒い羽色だけ
 が際立っており、他の4羽はほぼ同じ色で子供たちの性別は一目ではわかりにくい。 先月は雌雄判定をしてみたが
 疑問であり、以前の写真を見比べてみると9月に第1回冬羽になってからほとんど変わっているようには見えない。
             


  左はお父さんで右はお母さん。  お父さんはますます黒くなっているかと思ったが前回とあまり違っていない。
     

  左はお父さんと子供。  右は上がお母さんと2羽の子供たち。  次はいつ夏羽への換羽が始まるのか・・・性別が興味深い。
     

 最近は最初に到着した五主海岸の池に行くことはないそうだ。  行方不明の幼鳥1羽は池周辺でうろついていたオオタカの
犠牲になったものと考えられる。 一家にとってはとても怖い出来事だったのだろう。


*ファミリーのその後  2,009年3月11日  ヒナの誕生から8ヶ月と11日
  ファミリーのうち右端が母親で下にいるのが父親。  他の2羽は子供で左端は♀と思われるがこれだけしか写っていない。
             


  下が母親で右は上の写真に写っていない子供である。  母親と比べると背中が黒くなってきているので♂と思われる。
 左側の子供にも背中に黒い毛が生えてきているように見えるので多分♂。   子供たちの性別は♂2・♀1と推定。
  今回はファインダー越しに見ても子供たちの背中の黒さがはっきり見えてきたが、前の写真と比較してみると少しづつ黒
 くなってきていた。  換羽は一冬かけてゆっくりと進むのだろう。
             


  次回の繁殖が近付いた♂と上は♀。  この♂は9月にこの地に到着した時は頭が真っ白だった。  繁殖期の時期にはま
 た真っ白になるのだろうか。  次のカップルの相手もこの♀だろうか。  また、次回の繁殖に邪魔な子供たちとの別れは
 いつになるのだろう。  どうやって追い出すのだろう。  そこまで見定めるのは難しそうだが興味は尽きない。   ひょっと
 したらこれが見納めになるのだろうか。  昨年の産卵は6月だったので4月にはもう一度見られるのを期待している。
  5月にも・・・。
             



*ファミリーのその後  2.009年4月1日  ヒナ誕生から9ヶ月2日
  次回の繁殖が近付いたので家族が別れる前にと前回から20日にしかならないが早めに様子を見に行った。  前回と大きく
 違うのは♂と判断した2羽の子供たちの胸がほんのりとカーキ色に色付いていたことだった。  この色はこの家族の♂成鳥に
 は見られないが、各種図鑑に掲載されている♂の写真には赤いものが多かった。 
 ファミリーの集合写真。  左の3羽は♂で手前の幼鳥の胸がほんのりと
色付いているのがわかる。 
 右の2羽は♀で手前が母親=♀成鳥。  ♀にはこの色が見えない。  光線が悪くて良い写真にならなかった。
             

  
  もう一つ前回と大きく違っている点が有った。  これまでは親子仲良く睦まじんでいたのに父親が時折子供たちを威嚇
 する仕草をとった。  相手は♂幼鳥だけかと思ていたら♀も同じように脅されて父親が近付くと子供たちにありありと緊
 張が走るのが見えた。  
  孵化してから親鳥が運んでくれる餌で育つ鳥たちは巣立ちのときが来ると給餌をやめて巣立ちを促す。  孵化してすぐ
 に自分で餌を探して大きくなる鳥たちの巣立ち=親離れは親が子供たちを追い払うことによって行なわれる。  他の哺
 乳類でも見られる現象だ。  追い出しが始まったのでこのファミリーから子供たちが巣立ってゆくのも間もなくと思われる。
               


  もう一つ気付いたことがある。  撮ってきた写真を見ると♂は♂どうし、♀は♀どうしで固まっているように見える。  2枚前の
 写真は右に♀が2羽。  左に♂が3羽居る。  たまたまかと思って3月22日に友人が送ってくれた写真を見たら前に♂3羽。
 後に♀が2羽固まっていた。 前後を親が挟んだこの写真をお借りできたので掲載しておく。
                       
(素晴らしい写真だ。 けど借りている写真なので無断使用は御遠慮ください)
              


*ファミリーのその後  2,009年4月7日  孵化から9ヶ月8日
  今朝、地元の友人から「昨日5羽でいるのを確認したが、今朝は親がいなくて子供たちばかり」と連絡を頂いた。  
 別れが近いが追い出されるのは子供たちと思っていたので、親が子供たちを置いていったのは予想外だった。  しかし、考え
 てみればファミリーが8月18日にこの地に到着してからの7ヵ月半、1羽が不慮の事故死を遂げたとはいえ平和に過ごしてきた
 地に子供たちを置いていくのが子供立ちにとっては最も安全だろう。  親は子供たちの為に最良の道を選んだわけである。  
 これで親子は分かれたと思うが、次の繁殖まではもう暫く余裕が有るので様子を見に戻ってくるかもしれない。

  また、子供たちはいつまでこの池にいるのか・・・親子の別れが済んでももう暫くは観察を続けたい。

親子の別れのその後 
*2,009年4月11日  
 
 4月7日に子供たちを残して飛び立った親たちは翌日また戻ってきたが、子供たちのところには行かず別行動をしていたそう
 だ。 今日は紀伊長島に所用があって出かけた帰りに最後かもしれないと寄ってみたが親子共々不在だった。
 昨日からオオタカの若が出没しており、今日も行った時に池際の木にとまっていたのでこれを嫌って逃げてしまったのだろう。
 親子共々か別々かわからないがオオタカが去ったらまた戻ってくれることを願いたい。

  地元の友人の話では戻ってきた親と子供は別行動で子供が近寄ってくると追い払うが、危険があると警戒音を発して子供た
 ちを呼び寄せていたそうだ。  親はいつまで経っても子供たちのことが心配なのだ。

*2,009年4月12日 
  オオタカに追われて飛び去ったセイタカファミリーが今日は池に戻って親子別々に行動していたそうだ。
 しかし、1羽足りない・・・・子供たち3羽のうち♀1羽が欠けている。  ひょっとするとオオタカの犠牲になったのだろうか。
 オオタカに見付からずにうまk隠れていたのについに見付かってしまった。  セイタカファミリーに安住の地は無いのだろうか。
 自然界の厳しさを思い知らされた出来事だった。

*2,009年4月13日 
  オオタカの犠牲になったと思っていた行方不明の♀幼鳥が戻ってきた。  心配させるんじゃないよ・・・ったく・・。
 でも良かった。  ニュースを聞いたときはとても感動した。  

*2,009年4月14日
  また親が消えて子供たち3羽になった。  親が居るとき、親とは別行動ながらそれぞれ勝手に行動していた子供たち3羽
 も、親が居ないときは不安げに寄り添っているそうだ。  親はまた戻ってくるのだろうか。  多分、繁殖地を探しに出かけて
 いるのだろう。 

*2,009年4月16日
 
 親は戻ってきて5羽で居るのが確認されている。  

*2,009年4月18日
  5羽揃っているところで親夫婦の巣作りやマウンティング行為(鳥の場合はこう言わないのかな・・)などの繁殖行動が観察され
 たそうだ。
 ここは孵った雛たちが自分の脚で餌を探して歩くには池が深すぎる。  繁殖経験があるこの夫婦なのにここで巣作りするつもり
 だろうか。 

*2,009年4月20日
  池の水深が深くなって親子共々行方不明になった。  この時期は田植えを控えて水を張った田んぼが多いので5羽揃いか
 どうかはともかくとしてどこか近くの田んぼにいると思う。 

*2,009年4月24日
  愛西市で4月23日に観察されたセイタカシギのカップルを撮ってきた。  ファミリーの両親は頭がもっと薄くなっているので別
 のカップルだと思う。  このままここで繁殖してくれると良いのだがここでは無理だろう。  左は♂で右は♀。
     

*2,009年4月25日
  昨日、5日ぶりに2羽の親と♂の子供が1羽の3羽が帰ってきたそうだ。  したがって愛西市の2羽は別のカップルで夏から行方
 の知れないAのカップルとも違うと思う。  

*2,009年4月28日
  親2羽と♂の子供たち2羽が一緒にいるところを目撃されている。  ♀の子供はどこに行ったのだろう。  こうして少しづつばらけ
 てゆくのだろう。  親たちは次の繁殖地をどこに選ぶのか気になっている。

*2,009年4月29日
  最初に降り立った池に夫婦と♂の子供1羽の3羽でいたそうだ。  少しづつバラけてゆく。

*2,009年5月2日
  安藤さんにお会いしたので昨年の繁殖地の状況を聞いたらまるっきり水溜りが無くなっているとのこと。このままでは
 繁殖は無理だが、梅雨に入って水が溜まればまたチャンスは有るかもしれない。 昨年は6月初旬に産卵したと見られる
 のでまだ1ヶ月余裕があるが、雨が降って水溜りが出来ても餌が間に合うかどうかだ。
  その後、現地の写真を見せてもらったら葦原などの緑が整地によって完全に消滅。梅雨の雨がどうのという状態ではな
 いことを知らされた。  野鳥の為に作られた場所ではないので仕方がないかもしれないが残念なことである。

*2,009年5月7日
  5月に入って越冬した池からファミリーの姿が消えたそうだ。  親はどこかで繁殖できる場所を探しているのだろう。
  親が戻ってくる可能性はあるが一先ず観察記を閉じる事にした。
 
  セイタカシギの繁殖地としての条件は
 1、人や犬・猫・イタチなどが近づけない隔離された場所であること。
 2、孵化したヒナが歩いて餌を探せる水深が浅くて変化が少なく、餌の豊富な水場が有ること。こんな条件の場所では他の
   水鳥も繁殖していてカラスなどの天敵に共同で立ち向かえる。
 3、最も危険なカラスがいないか、カラスの餌が豊富に有って雛に拘らない。

  以上かと思うが自分の周辺を見回してみるとこのような条件の場所は見当たらず、セイタカシギの繁殖がいかに難しいか
 を改めて痛感した。
 親たちが今年も無事に雛を育て、新しい家族を引き連れてこの池に戻ってくる日を楽しみにしている。




 

*2,009年7月
  6月19日 四日市市石原地区の広大な埋立地でセイタカシギの繁殖が確認された。
 
  7月3日に再度調査に入り、抱卵している親の傍らに一羽の雛がいるのが確認された。 全卵が一度に孵化するのでは無
 かった。
  この時は観察場所から比較的近い場所に巣が有ったので頻繁に飛翔する親鳥の写真も撮影されている。
  それによると母親は成鳥で
父親は次列風切り羽のエッジに白線の有る若鳥(第1回夏羽)で姉さん女房だった。 セイタ
  カシギは産まれた翌年から繁殖に入れる。

 7月10日の調査に同行させてもらった。
  現地は入口にゲートのある埋立地で昨年の場所より出入りの監視は厳格だった。 
  昨年の場所は営巣している場所に道路が有ったので近くまで寄れたが、より広大で池と葦原が点在した内部に道路は無く
 遠くから観察するしか無かった。
  雛を連れて移動したあとで営巣場所にファミリーの姿は無く雛の姿は観察場所からは1羽も確認できなかった。
  この日は結局7羽のセイタカシギを確認した。 3ツガイの繁殖とさらに見えない場所で繁殖している可能性もあるが湿
 地帯への立入りは許可が出ない上に危険なためこれ以上の観察は断念するしかない。
  なお、昨年繁殖した2組のファミリーがどれくらい関与しているのか興味深いところだが、近くで写真が撮れないのでは
 比較のしようがない。  これらのファミリーの何組かが越冬の為に松阪市の池にやってくるのを楽しみに待ちたい。
  

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