この11月のこと「どこかにサバクヒタキが出ているらしい」との噂が流れた。 場所はなかなかわからなかった
けど友達が執念で特定し、12月1日に私もおこぼれをいただいた。
サバクヒタキは♀で、全体的にとても白っぽく見えた。
見に来ている人は少なかったけど、越冬すると決めつけていたのでそのうちに人が集まるものと思っていたが
、この日を最後に2日以降は姿が見られなくなったと連絡があった。 とても残念なことであった。
この個体について、手持ちの4種類の図鑑と見比べているうちによく似ているイナバヒタキとどこがどう違うの
か・・・これは本当にサバクヒタキの♀なのだろうかと疑問がわいたので写真の有るイナバヒタキと比較検討して
みた。
写真のイナバヒタキは2,008年9月7日に愛知県の一色町で撮影したもの。
1、サバクヒタキ類という小分類があり、イナバヒタキ・ハシグロヒタキ・サバクヒタキ・セグロサバクヒタキの4種
が属する。
2、いずれの種も繁殖地と越冬地が日本から離れていて渡りのルートからも外れるため、稀な旅鳥として記録が
少なく、特にイナバヒタキは写真の個体を撮影した頃に日本での観察例は10羽を超えないものとされていた。
♂♀同色で識別は難しく性別は不明。
3、イナバヒタキを除くサバクヒタキ3種は♂♀の区別がはっきりしており、♂どうしの間での識別は容易である。
♀はよく似ているが、ここではサバクヒタキの♀どうしの比較は必要のある場合のみとし、イナバビタキとの
比較を主とした。
4、サバクヒタキ類は地上採餌で農耕地・埋立地・芝生を含む背丈の低い草地などで観察される。 今回掲載の
イナバヒタキは海岸堤防の裏側の空き地(荒地)。 サバクヒタキは海岸堤防と続いたパターゴルフ場の芝生
の上で活動し、時々海岸の方にも降りていた。
5、私が観察したイナバヒタキもサバクヒタキも警戒心は薄くてあまり人を恐れず、静かに待っていれば目の前ま
で近づいてきた。
6、イナバヒタキ・サバクヒタキの2種とハシグロヒタキ・セグロサバクヒタキの2種には尾羽のパターンと言うわかり
やすい識別ポイントがあり、開いた尾羽を観察できれば識別が容易になる。
ハシグロヒタキとセグロサバクヒタキは尾羽の先端の黒色部が短く、イナバヒタキとサバクヒタキは長いが3者
とも中央尾羽が黒くて逆T字型になる。
@左向き写真
立ち姿はその時の状況にもよるが、イナバヒタキは直立性が高くてすっくと立っているように見え、ここを識別ポイ
ントの一つに上げている図鑑もあった。 サバクヒタキはズングリ体型で、頭から背中は白っぽく見える。
イナバヒタキは黒い過眼線と白い眉斑が顕著であるが、サバクヒタキは目の上から後ろにかけて薄い眉斑が有る
程度。
イナバヒタキ サバクヒタキ♀
A右向き写真
光線の具合もあるがこの写真ではサバクヒタキの眉斑は上の写真よりやや目立っている。 際立っているのは
頬が茶色いことで、♂であれば黒くなる部分と合致している。
B前からみた写真
写真は撮影時の光線の具合によって色が変わるけど、胸からの下面ははっきりと左のイナバヒタキの方が茶色味
が強く、サバクヒタキは白っぽい。
C後ろ姿
イナバヒタキを撮った時、尾羽が識別に重要との知識が無かったため尾羽を開いた写真が残念ながら1枚も無かった。
しかし、ハシグロヒタキやセグロサバクヒタキの尾羽は黒い部分が端から短いのでそれらのどちらでもないことはわかる。
右側のサバクヒタキの尾羽も黒い部分が長いのでイナバヒタキかサバクヒタキという事がわかる。 サバクヒタキの中央尾羽は
交差した初列風切り羽の陰になって見えていないのが残念。 もう少し見えれば山形に盛り上がっているのがわかる筈だった。
初列・次列・3列風切り羽の羽縁の様子も両者はかなり違ってサバクヒタキの方が幅が狭い。
この半月ほど毎日イナバヒタキとサバクヒタキの写真を見比べていた。 最初は同じように見えたけど次第にまったく別物という事が
わかってきた。 写真を撮るなら多いほうが良い。 色んな鳥がいるけど全てに精通すると言うことは難しい。 いろんなポーズ
が撮って有れば必用なときにとても役に立つ。
今後も見直しを進めるつもりでいる。 お気づきの点があればご教示をお願いしたい。