オオタカ亜成鳥の考察 目次に戻る
2,009年8月19日
2,010年3月10日改定
2,009年の夏、オオタカの繁殖を観察中に営巣地で縦斑と横斑の入り混じったオオタカに出会った。
これまでに私が観察したオオタカ、またネット上に掲載されているオオタカ写真は横に斑の入った成鳥か縦に斑の入った幼鳥・若鳥
のどちらかでこのような個体を見たのは初めてだった。
胸が縦斑の幼鳥・若鳥から横斑の成鳥に至る過程で成鳥羽・幼鳥羽の混在するこの時期を必ず通る筈だがこれまで観察する機
会が無かった。
このオオタカは虹彩の色が黄色いこと・眉班が薄いこと・胸の横斑が濃く太いことから♀の亜成鳥=若鳥と推察した。
いろいろと調べてみると♀は第1回目の夏から繁殖に入る個体が有るようで、このオオタカが繁殖地にいたことと縄張りなどを考え
ると母親の可能性が考えられた。
2,009年8月7日撮影
同じオオタカを横から見たもの。 幼鳥に特有の各羽縁の白斑がところどころ残っているだけで成鳥への換羽が進んでいる。
背中の青味が少なく、横からのこの写真では成鳥の♀のように見える。
2,009年8月7日撮影
このオオタカの年齢と、オオタカが一般的に繁殖に入るまで(成鳥になるまで)何年かかるかという点が知りたかったので調べて
みたところ次のようなことがわかった。
1、オオタカの寿命は10年前後で通常は2〜3年で繁殖に入る。 すなわち2〜3年で成鳥になる。
2、生まれた翌年に繁殖に入った♀の例が少なからずある。 この時の資料を見ると胸は完全に縦斑になっていた。
♂にはこれほど早く繁殖に入った例は少ないそうで♀の方が早熟ということだ。
疑問・・・成鳥羽に達するまでの年齢に雌雄で差は無いか。 成鳥と判定した個体がまだ若かったということは無いか。
3、幼羽から成鳥羽に換羽するのは初夏〜夏で、生まれてから2年目の秋には胸の縦斑が消えて横斑になる。
このため主として冬時期に観察する事の多いオオタカは成鳥羽か幼羽のどちらかになる。
4、オオタカの♂成鳥は背中が青味を帯びて虹彩の色はオレンジ色、胸の横斑は線が細くて白っぽく見える。 ♂の横斑は年齢を
重ねるに連れて白っぽくなってゆく傾向がある。
♀の背中は褐色味がかかって虹彩は黄色、胸の横斑は♂よりも太く濃く♂より体が大きい。
背中の雨覆い肩羽などに白い斑が残るのはまだ若い個体である。
5、繁殖期は特に警戒心が強く巣作りから抱卵中の観察・撮影は営巣放棄に繋がるので禁物。 ヒナが誕生してからも巣の近くで
の観察・撮影は育児放棄に繋がりかねないので少なくとも巣立ちまでは控えなければならない。
このオオタカに関して
1、胸の横斑が明瞭になってきていることから今年産まれの幼鳥ではなく少なくとも一冬は越してきている。
2、縦斑だけの幼羽の♀が繁殖に入った例が観察・公開されている。 それによれば生まれた翌年としてあった。
幼羽の♀が3年続けて繁殖した例を見ると1回目は完全に縦斑、2回目はかなり横斑になっているが縦斑もこの個体ほどではな
いが目立っており、3回目には完全に横斑だけの成鳥羽になっていた。
ただ、縦斑だけだった親も繁殖が終わる頃には横斑が増えて縦横入り混じるようになる。
ちなみに換羽の順序は一般的に 幼鳥→第1回冬羽→第1回夏羽→第2回冬羽→第2回夏羽・・・・・・→成鳥である。
第1回冬羽は最初の冬を迎えて幼羽が換羽した状態を言うが、環境省自然環境局の「オオタカ識別マニュアル」によれば、
オオタカの換羽は年に1回だけで、幼鳥は生まれた翌年の夏から秋にかけて第1回の冬羽に換羽する。
まさにこのオオタカが幼羽から第1回の冬羽への換羽途中ということになる。
3、このオオタカがいた営巣地の近くにはまだ幼鳥が2羽いたのでここをテリトリーとしている個体である。 他所から侵入してきた
のであれば親に追い払われていたはずなのでこの個体は母親である。
4、父親を見たい・・・出きればこの親をもう一度みたいと8月14日に出掛けてみたが親も幼鳥も見当たらなかった。
8月初旬には営巣地にいたが中旬にはバラバラになってしまった。 あるいは場所を変えて一緒にいるかもしれない。
繁殖に関して
1、2月初旬〜3月頃にディスプレイ・フライトが始まり、巣作りが始まってしきりに交尾する。
2、4月上旬〜中旬頃から抱卵が始まる。 卵は普通3個で抱卵期間は35〜40日。 抱卵は♀が中心で頻繁に転卵する。
♂が♀に餌を運び♀は巣の外で食べる。 この間♂は巣の中に入る。
3、ヒナが誕生してからも♂が餌を運んで♀に渡し、♀からヒナに給餌する。 餌はスズメ・ムクドリ・ハトなど鳥類が90%を占める。
4、孵化から35日前後でヒナが巣の外に出始める。 この頃には産毛から幼羽に変わっている。
巣立ちから1ヶ月少々で幼鳥は繁殖地を離れる。 幼鳥にとって最初の冬は半数が越せないほど厳しいものである。
なお、営巣地については絶滅危惧種・オオタカ保護の為に問い合わせには応じられません。
この項作成に当たって次の資料を参考とさせていただきました。
1、オオタカの廉価な個体群動態解析(大成建設)
2、オオタカってどんな鳥??(オオタカ保護連絡会・里山クラブ)
3、神奈川県オオタカ保護指導指針
4、「オオタカ観察記」氏原巨雄著
5、環境省自然環境局「オオタカ識別マニュアル」