コシアカツバメのコロニーの観察
                                                                              
                            
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 1,始めに
  このレポートは主としてコロニーで子育てをしているコシアカツバメの巣への出入りや巣作り・給餌・巣
 立などを観察・記録した4年間のデータに基づいて記述している。ネット上などで公開されている内容と
 食い違いが有る場合はこのコロニー固有の事として頂いても結構である。

  桑名市西部の大山田団地内・播磨中央公園をまたぐ道路橋にコシアカツバメのコロニーが出来ていて、
 巣巣の総数が50個を超えるコロニーに成長している。
  かって桑名市には県道142号線の新嘉例川橋に巣の数が100個を超える大きなコロニーが存在して
 いたが2009年の周辺田んぼの圃場整理を機に放棄され、コシアカツバメたちは学校や別の橋に巣を
 かけて転々としていた。 
  たくさんのコシアカツバメが飛んでいるとの情報を貰って公園に行ってみたのは2021年の6月で、
 周辺に散らばっていたコシアカツバメがこの場所にコロニーを作って巣の数は29個も有った。

  橋の下は暑い夏でも陽射しが遮られて比較的涼しく、中は見えないものの巣を出入するツバメの様子
 がよく見えたので7月に入ってから子育ての様子やコロニーが成長してい行く過程を公園内から観察を
 始めた。 コロニーが自宅から車で数分のところにあることも後押ししてくれた。
   
 2,コシアカツバメ基本情報
   スズメ目ツバメ科に属する一亜種で亜種ツバメとほぼ同じ大きさ。 腰が赤いので識別は容易。
   ツバメよりゆったりと飛ぶ。日本各地で繁殖するが関東以南で多く、10月頃に繁殖地から東南アジ
  ア及び中国南部に渡って越冬する。 繁殖地ではコロニーを作ってつぼ型の巣で子育てをする。
   ツバメが数を減らしているようにコシアカツバメも数を減らしていて、2,023年現在で28の都道
  府県で絶滅危惧種〜準絶滅危惧種など何らかのカテゴリーで絶滅危惧種の指定が行われている。
   
   コシアカツバメの寿命は山階鳥類研究所が1961年から2017年にかけて行なって現在も公表され
  ている「鳥類標識調査より得られた種別の生存期間一覧」に3個体が掲載されている。 
   成鳥で捕獲された個体に識別番号を付した足環を付けて放鳥し、再捕獲された3羽は4年以上が
  1例と5年以上が2例となっており、再捕獲後は足環を外して放鳥していることから寿命は5年以上で
  ある。
   ネット上では寿命は2年との記述を見かけるが、寿命が2年では巣を増やすどころか種を維持する
  にも短すぎる。
   ただし、5年以上生存する個体はいても渡りをするからには生存率はそう高くないと思われるので平
  均寿命はそれよりかなり低いだろう。
   
 3,コロニーの観察
   コロニーの観察は公園利用者に配慮して週の平日に2回、午前中に2〜3時間かけて行った。
   休日は水路側の通路は子供たちの遊び場になっているので観察日から外した。
   予定日であっても園舎を持たない保育園の親子グループが橋の下を園庭として利用している時は中
  止して日をずらし、雨の日は中止としたため観察日の間隔があいていることがある。

 4,コロニーの定期観察がコシアカツバメたちに与える影響
   夏の間は公園利用者は多くないがウォーキングの人がよく通り、休日には暑さから逃れた子供たち
  が橋の下のクリークを遊び場にするのでツバメたちと人との距離は近い。 平日には橋の下にシートを
  敷いて幼児たちの遠足の場になる事もしばしば有る。
   コシアカツバメは警戒心が強い場合も有るようだが、この場所をコロニーに選んだのはツバメの方な
  ので脅威を与えていることは無い。 実際、観察しているとツバメがすぐそばまで私を観察に来ることが
  しばしば有った。 

 5、営巣場所
   観察中のコロニーのある橋は下部にインフラ施設を抱えているとみられる巨大な道路橋で、長さは
  60m・幅は約20m。 裏側は道路に沿って橋の両側に大きく区切られ、それぞれ10の区画があって
  合計で20の区画に分かれている。
   コシアカツバメの巣は2面または3面でコンクリートの橋と接して作られており、天敵の蛇やカラス
  は近寄れないが、使用中の巣であってもスズメに乗っ取られることが有る。 橋の高さは10m前後と
  高くなく人との距離は近い。
   橋の下は北西から南東に向かって左右に2本の通路が有り、ウォーキングの人は主とし左側を通
  るのでこのエリアに巣は少ない。 右側の通路を進むと細い水路に沿うようになり、水路の右側は橋
  のエンド部分まで10〜20pくらいの楕円形の石がたくさん敷かれていて人が近付きにくいので巣が
  多くある。 右端の辺りは樹が生えていて巣への飛行コースから外れているのでここに椅子を置いて
  観察の基地とした。
      
 
   このエリアには5個の巣が巣が有って観察場所としては一番見やすくなっている。
      

 6,巣作り
   コシアカツバメが渡って来るのは4月中旬である。
   渡ってきたコシアカツバメは体力を回復するためすぐには子育てに入らず繁殖相手と2羽で飛び回っ
  ていることが多いが、中には新しい巣を作り始めるカップルもいる。しかし、巣作りの時期は決まって
  いなくてランダムに行われ、完成までの期間も様々である。
   途中で放棄したのかと思っていたらいつの間にか完成していることも何回か有った。

   巣は泥団子を一つづつ接着してつぼ型に作られ、入り口が狭く奥行きは深いので中は見えない。 
   一般的につぼ型と言われているけどヒョウタンのように細長かったり写真のように幅広型も有る。
   色模様が付いているのは泥の採取地によるもので採取場所は下の水路の泥を利用したり、往復で
  2〜3分の場所から運んできたりと何ヵ所か泥採取の場所を持っている。
                

   水路で泥を採取するところを見ていたら泥の塊を口の中で転がして唾液を混ぜ、次から次へと大
  量の泥団子を咥えているように見えたが、どのように唾液を混ぜているのかはもう少し観察が必要で
  ある。
   唾液には「高分子糖タンパク」のムチン(動物から分泌される粘液物質)が含まれており、このムチ
  ンが接着剤となって強固にコンクリート壁に固定され、縦壁への接着が主に重量を支えている。
   写真は泥団子を咥えてこれから巣に運ぶところ。
  

  泥団子を一粒づつ丁寧に接着してゆき、形が出来ると枯草などを集めて中に敷き詰める。 

 

   スズメに乗っ取られて落とされた巣。 この中に卵の殻が幾つか残されていた。スズメが巣を乗っ取
  ると持ち込んだ大量の巣材が外から見えるようになるので見分けは容易である。
            

   写真はコシアカツバメの卵の殻。 巣は天敵からの攻撃に厳重に守られる場所にあるため保護色
  にする必要が無いことから真っ白で、小指の第1関節から先より少し小さいくらい。
   卵の数は標準的には4〜5個とされているが巣の入り口が狭いため雛が4羽揃っているのは見た
  ことがない。
           

   2021年・22年に使われていた巣が23年の4月に破損して崩れ落ちた。手の届く範囲に僅かばか
  り巣の壁への取り付け部が残っていたので回収した。外そうとしたらかなり強く張り付いており、外した
  土はかなり重くて硬かった。水に対して強いかどうかを見るため少量の水をスプレーしたら簡単に崩れ
  た。 巣をかける場所は雨のかからない場所を選んでいる。
   近くの学校の3階部分の軒先に掛けられていた巣が放棄されたのはこの事から雨が掛かるからと
  推定したけど、放棄された巣は今も軒下の奥深くに雨から守られて残っていて放棄された理由はわか
  らない。 
   写真は外してきた巣のかけらで、水で崩してから固めてみたけどこのようなデコボコは出来ずただの
  泥団子にしかならなかった。
             

 7,巣の数の変遷 
   
   2021年7月からの巣の増加と使用された巣の数、巣立ち回数は以下である。
    巣の総数   使われた巣の数   巣立ちした巣の数   巣立ち回数    消滅した巣
   2021年    29巣     21巣      14巣    14回    
   2022年    32巣      23巣        22巣     26回      2
   2023年    42巣      26巣      16巣     26回      2
   2024年    54巣      42巣      34巣     49回      4

   巣の総数にはコロニーの成長度を計るため、消滅した以外のスズメに乗っ取られて放棄された巣や
  破損したけど形として残っている巣も全て含んだ。 これまで消滅した巣の総数は4個である。
   子育てした親が翌年も同じ巣を使ったかどうかは個体識別が出来ないので不明である。
   2021年は7月からの観察のため巣立ちした回数が少ない。
   2023年は使用された巣が多かったのに巣立ちした巣が少なかった。スズメによる巣の乗っ取りが
  他の年と比べて7回(他の年は3回)と倍以上に多かった事が影響しているかもしれない。
   2024年は台風の襲来が一度もなかった事も有って、暑かった夏にもかかわらず巣立数・回数が激
  増した。
   コロニーに生息するコシアカツバメの総数は使用された巣の数の倍とすると21年の42羽から24年
  の84羽に倍増。 それに巣立ちした幼鳥が加わるので24年には200羽以上に増えている。
   渡りをする割には5年以上と寿命が長いことからコロニーで育ったツバメが増えてゆくので巣の数は
  これからも急増するとみている。

 8,抱卵日数と育雛日数・子育て
   Wikipediaによると、抱卵日数は14〜20日 育雛日数23〜25日となっている。
   すなわち子育て日数は40日前後となっているが、産卵から巣立までは37日〜45日とバラツキが
  有る。 これを踏まえて巣への出入りが1羽づつになった日から巣立が終わった日までについて24
  年の記録を調べてみた。 観察日が週に2回なので前回の観察日から当日までの間に起きたことで
  ある。 
   4月中旬にコロニーに帰ってきたコシアカツバメは体力回復のため暫くは2羽で行動し、産卵から
  巣立ちまではおおよそ40日なので1回目の産卵は4月下旬から5月初旬である。
   2022年から24年の3シーズンの記録では5月中の巣立ちは一度もなく、一番早くて6月11日。
  多くは6月13日以降に集中していた。2回目の巣立ちは7月下旬から8月中旬にかけて行われる。

   抱卵が始まると巣への出入りは1羽づつとなり、1羽が入ると1羽が出てゆく。1羽が抱卵中の親に
  餌を運んでいるようには見えないので♂♀交代で抱卵し、交代で食事に出掛けている。
   雛が孵化すると2羽で餌を運ぶので出入りが頻繁になるが給餌回数は思ったより間遠で少ない。
   2回目の巣立ちは8月が大部分で9月の末に一度だけ3回目も有った。

   2024年の巣立ちの有った巣の抱卵開始日を調査表から調べてみた。 
   1回目の巣立数22巣のうち抱卵開始日が推定出来たのは12巣でそのうち10巣は巣立まで39〜
  41日で給餌日数は23〜24日。 
   2回目の巣立巣は6月25日から7月5日まで休日や雨の日が入って10日間記録が途絶えていた
  間に抱卵開始が有ったため抱卵開始日のわからない巣が多くあった。 それでも24巣のうち16巣
  で38日から42日。 中には46日というのも有った。 給餌日数は変わらず24日前後だった。

   Wikipediaの記述は正しいが、中には抱卵から40日かからずに巣立を迎えた巣が有る。
   産卵数が少ないと子育て日数が短くなると思うので25年の観察ではもう少し間隔を詰めて正確な
  データを得たいと思っている。
  
   4年間の観察中、一度だけ巣の下に雛が落下しているのを見た。23年6月23日の事でまだ目が
  開いていないので自分で落ちたのか親が落としたのかスズメが落としたのかわからないし、落ちたの
  が1羽だけだったのかもわからないまま巣の観察を続けた。その後、親は9月まで 巣への出入りを
  続けたが子育てする様子は無く、翌24年は6月と8月の2回雛を巣立ちさせた。
   未熟な親が子育てに失敗した例かもしれない。
 


 9,コシアカツバメの餌・及び雛に与えていた餌
   私には科学的な分析を行う知識も術も無いのコシアカツバメが咥えている餌の写真を撮ることに専念
  することにした。

   歯を持たない鳥類は食物を消化するため全ての種がソノウを持っていて食べたものを溜め、前胃を通し
  て砂ノウと呼ばれる胃に送る。 砂ノウにはあらかじめ飲み込んでおいた小石が入っており、筋力によって
  摺り潰して消化する。 観察中には何度か小石を飲み込む光景が見られた。
          
          
   この写真では羽の生えた虫を咥えている。 羽アリを与えているのか種類は判らないが、孵化間もない
  雛にはこのような餌を与えている。
          

          

    巣立った幼鳥にマルハナバチによく似た虫を与えようとしている。 あるいは甲虫の仲間か。
          

   一番わかりやすかったのは8月に巣立の近付いた幼鳥に与えていたキリギリス類で大きくて鮮やか
  な緑色をしていたのでピントが合わせやすかった。 キリギリス類は固い脚を持っているので消化する
  には雛の砂ノウには石が入っている必要がある。 給餌のこれまでのどこかの段階で親は雛に小石
  を与えているのだろう。
          
  
  親が雛に給餌する際には口の中まで顔を突っ込むのでキリギリスをくわえているこの写真には違和
 感がある。 食べられずに下に落としたかもしれない。
          

  幼鳥にキリギリスを与えるところを見ていたが、親の与え方が悪いのか食べられる大きさになって
 いないのか食べられなかったキリギリスが下にかたまって落ちていた巣が有ったので拾ってきた。 
  大きさからウマオイ・ツユムシ・クサキリ・クビキリギスなどと見られる。
  巣の下にキリギリス類が落ちていたのはこの巣だけだったので他の巣ではきちんと食べている。
          
  
  雛が落とした糞を分解して未消化の何かが出てこないか調べてみた。 雛に与える餌について
 ネット上で羽アリを与えていたとする優れた研究論文があるが私は目視チェックしかできない。
  見たところ甲虫類の殻のような黒くて艶のあるものばかりだった。
         

 10,雛の巣立と幼鳥
   雛の数は最多で5羽とされているが、出入り口が狭いので4羽以上同時に見ることはほぼ無かった。 
         
 
  親が雛の肛門からの排泄物を受け取って棄てに行くところ。 この写真の雛は大きくなっているので
 直接巣の下に落とせるが、雛が小さくて動けない間は親が巣の中に入って運び出してくるので孵化し
 ていることがわかる。
         
  
   巣の中は見えないので雛の正確な数はわからないが、雛が大きくなって糞を下に落とすようになる
  とその量は次第に増えてゆき、巣立が終わってからの量で何羽巣だったかおおよそわかるようになる。
   量は多かったり少なかったりなので雛の数には大きなばらつきがあり、量が少ないまま巣立を迎え
  る巣も幾つか見られた。 これが巣立までの日数とどう関わるかは25年の課題である。
               
  
   巣立の迫った雛。 この段階では嘴の色はまだ黄色いが、巣立ち後は嘴の黄色は殆どが無くなっ
  てしまうので成鳥か幼鳥かの識別は背中の色か行動でしか出来なくなる。

         

   この2羽は左が成鳥で右側は巣立したばかりの幼鳥で嘴に僅かに黄色味が残っている。光線の
  加減も有るけど成鳥に比べて幼鳥の背中は褐色みが少し多い程度で親との見分けが難しくなって
  いる。
     

   巣立ったばかりの幼鳥。 顔に赤みは無く背中も褐色のままで、嘴の黄色が抜けかかっている。
     

   顔の赤味がすくないことや背中の青色がほとんど見えないことから幼鳥と見られる。
     

   顔の赤味は成鳥近いほど濃くなっているけど、背中の褐色みが強いことから幼鳥と見られる。
     

  この個体は顔が赤いので幼鳥としても巣立ってからかなり日数が経っているのでて成鳥か幼鳥かは
 わからない。
     

  成鳥。 背中と肩羽がきれいな青色で初列・次列・3列風切り羽・雨覆いは褐色。 嘴から頬や喉の
 縦縞は太くてくっきりと鮮やか。
     

  成鳥。 風切り羽の様子がよくわかるので掲載した。
     


 11,これからのコロニー
    コロニーのスペースはまだたくさん空いているので巣の数は増えてゆく。 観察を開始した時は
   気にならなかったけど巣が増えて心配事が出来た。 それはツバメが数を減らしている原因の一つ
   と同じく糞の問題である。 巣を出入りするコシアカツバメたちは所かまわず糞をまき散らし、クリー
   ク沿いで子供たちがシートを広げて休憩する通路が酷く汚れるようになった。
    陽の当たる場所の糞は乾燥して自然消滅してゆくが陽の当たらないクリーク沿いの橋の下は汚
   れがどんどん蓄積して不潔になる。 しかもこのエリアに巣が多いので余計にに汚れが酷い。
    公園利用者から苦情が出て巣が撤去されるとコロニーが消滅してしまうので昨年の夏は私が何度
   か水洗いして糞の始末をした。 私が観察できる間はそれで済むが、何時までも続けられる訳では
   無いので野鳥の会の保護対象としていただくようにお願いして聞いていただいた。 
    野鳥の会の運営はボランティアで行われていて人員は少ない。 保護活動は野鳥の会の後押しを
   受けながら私が行うが取り敢えずは汚れた通路をシーズン中に数回掃除してもらいたいと公園管理
   者にお願いするつもりである。

    繁殖地を公開する事に対しては否定的な意見が有るのは承知しているが、公開することによって
   注目が集まりそれがコロニーの保護に繋がるとのアドバイスを頂いたので全てを公開した。
   今年(2025年)もツバメたちが帰って来る時期になった。 見逃さないようにして今年もしっかり観察
  したい。
                   取り敢えずは以上。      2025年4月2日