蕪栗沼と伊豆沼(宮城県)  2,007年12月5日


 冬季、マガンや白鳥の渡来地として宮城県の伊豆沼周辺はバーダーのみならず観光地として有名な存在で、バーダーなら
一度は訪れてい見たいと思うのではなかろうか。  今回仙台を訪れる機会を作って蕪栗沼と併せて訪れてみた。


*蕪栗沼  10時~12時

 宮城県の探鳥地と言えば圧倒的に伊豆沼が遊泳であるが、伊豆沼から10km南にある蕪栗沼とその周辺もマガンやオオハクチョウの
渡来地として貴重な存在である。

 仙台の宿を出たのが8時半と遅めだったのは天候のせいもあった。  1時間ほどで現地の近くまで到着したが沼へのアクセス方法が
わかりにくくて遅くなってしまった。

 結局沼への野谷地遊水池の方から接近することになり、このあたりで1,000羽近いマガンの群を見た。

 案内図の現在地と書かれている場所に駐車場が有ってここに車を停め、⑥番から白鳥越流堤⑤~⑨へと歩いて開水面に至った。
 駐車場には簡易トイレも用意されており、①の場所辺りにも駐車場が設けられていた。

 冬の平日とあって観察する人は少なく、横浜から来たという二人連れだけだった。 地図では水色で示されている部分が車で通れる
道路である。

                        


 沼の東側に広がるの谷地遊水池はたんぼになっていて車のすれ違える広い農道で仕切られており、車を乗り入れたら目の前の田ん
ぼに無数のマガンが舞い降りていた。  驚かさないようにそーっと接近したけど警戒心はそれほど強くなく、周辺のどこかにいるという
カリガネをスコープを使ってマガンの1羽づつを見ながら探したけど寝ているものもいて見付からなかった。
 誰か見ている人がいるとか、この場所によく降りているなどの情報が無いと初めての場所で珍鳥を見付けるのは難しい。

 東北自動車道を北上中、古川IC付近で頭上を飛んでいくマガンの群を幾つか見たが、たぶんこのあたりから飛び立ったものだろう。

    


 中には写真中央のように青い首輪をつけられているマガンも混じっていた。
                 


 
の場所から白鳥遊水池を望む。 この場所も沼のように水が溜まっており、あちこちにポツポツとオオハクチョウが浮いていた。
 奥に
の白鳥越流堤が見えている。
 



 白鳥越流堤を歩いてゆくと左手に蕪栗沼が見えてきてオオヒシクイやオオハクチョウがたくさん浮いていた。 
     



 沼で一番多いのはオオハクチョウで、次に多いのはオオヒシクイだった。 人が少ないのでどちらものんびりと湖面に
浮かんでこちらを警戒する様子はなかった。
     


 カモの数は少なくてマガモ・カルガモ・オナガガモくらい。 浅瀬には3羽のオオハシシギと1羽のツルシギがいた。
 こんな寒いところで越冬するのだ。  タゲリの群もおりてきた。
 



 蕪栗沼(10時~12時)で観察した野鳥は次の
23種類
 
ダイサギ  アオサギ  マガモ  カルガモ コガモ マガン オオヒシクイ オオハクチョウ トビ チュウヒ
 タゲリ ツルシギ(1) オオハシシギ(3) ヒバリ ハクセキレイ ヒヨドリ モズ ツグミ ホオジロ シメ
 スズメ ハシボソガラス ハシブトガラス
  

 以上観察後伊豆沼に移動した。






 伊豆沼(13時~16時30分)

 事前に十分調べて行ったつもりだったが、帰ってきて改めて調べなおすと沼の一部しか見ていなかった。
 時間が足りなかったこともある。 わずか3時間半の滞在では見られる範囲は極めて限定されており、沼の東側にある
の観
察館から赤いルートの
②~③と辿ったところで日没となった。
 この間に3カ所のサンクチュアリーセンターがある。 現地にいるときは思い付かなかったけど、ここを訪ねてカリガネや
シジュウカラガンの情報を貰っても良かった。
        

 
は迫町のサンクチュアリーセンターで野鳥観察館が設けられていた。 時間が無かったのでセンターはパスして観察館
に行ってみた。  名古屋市の庄内川の観察館を予想していたが無人で観察するスコープは無く、風をよけるための建物で窓
から沼を覗いてみたけど野鳥の姿はまったく見られなかった。
              


 
と線路の間・迫町のセンターの脇にハート形の小さな池が見えている。 この池は羽を傷めた野鳥を保護している池で、
カモやオオハクチョウが餌付けされており、車を駐車場に入れたらたくさんのカモが餌を貰おうと寄ってきた。
 大部分がオナガガモで陸に上がっているのは♀が多かった。他のカモはわずかな数の
キンクロハジロ・ホシハジロ・
マガモ・オオバン
で数の多いと思われるコガモは人に馴れないのかいなかった。
 カモやオオハクチョウの中には陸に上がってきてぼーっと傍らにたたずんで餌を待っているものもおり、パンを出してやる
と手からも食べた。
  


 カモたちと遊んでから沼沿いに車を進めた。 水面に注意しながら進んでゆくが浮いている水鳥は岸近くの僅かばかりの
オオハクチョウだけでカモたちはまるで見られなかった。  途中から湖岸の道路が通れなくなって三工区と呼ばれている
沼の南側の田園地帯に降りた。 降りたところの道路を挟んだ左側の田んぼにオオハクチョウの群、右側にマガンの群が餌
を探していた。 この場所は蕪栗沼と比べて農道が狭く、野鳥の保護という点では意識が薄く感じられた。
 オオハクチョウの群の一部は農道の上にまで出てきており、車での接近には寛容だった。
                

 右手のマガンの群の中にカリガネが混じっていないか見ていったら、思いもかけないことにシジュウカラガンが5羽も
混じっていた。 11月25日の情報では1羽になっており、探しだすのは無理と思っていたので幸運だった。
 写真は撮ったけど遠かったので少しづつ接近しようと思っていたところに後ろから2台の車がやってきて写真を撮るため
に人が降りた。 鳥たちまでかなり距離が有ったけど敏感な一部が一斉に飛び立ち、その中にシジュウカラガンも混じって
いて飛び去ってしまった。 遠くても人の姿に鳥たちは敏感である。 なんとも悔しい出来事だった。 
                



 次に
の内沼に行ってみた。 サンクチュアリーセンターはわからなかったが、岸辺の駐車場に車を入れたらここで
も保護のための餌付けがされていて多くのオナガガモに囲まれた。 
 車の外でオオハクチョウが餌を待っている。 翼が傷んで垂れさがっているのが痛々しく、傷んでいる鳥の多いのが
ショックだった。 手前のオオハクチョウは左翼が傷んで垂れさがっている。  これは治らないだろう。
 時刻は午後の3時になっており、沼は逆光になって何も見えなかった。 駐車場を出るときはカモたちに囲まれて踏む
のじゃないかと冷や冷やだった。
                



 内沼は早々に切り上げて③の野鳥観察所に行った。 ここは10台分くらいの駐車スペースとトイレが有るだけで建物は
無かったが、ここでも餌付けされていて少数ながらオナガガモがいた。 地図で見るように伊豆沼の西の端に近く、夕日ポイ
ントとしても有名だそうだ。 そして4時ころから塒入りするマガンの戻ってくるのが見られるそうだ。
 左の写真は③から見た西の方向。 右の写真は落日であるが、生憎と雲の中だった。
  


 塒入りは4時を過ぎてから始まった。 あちらこちらから西の端の狭い水域を目指して次々とマガンの群がやってくる。
 先ほど見た群も来ているのだろうが、北の方角からやってくるものが圧倒的に多い。 名古屋近辺で雁行する群はまず
カワウであるが、ここではすべてマガンで塒入りは空が暗くなるまで切れ目なく続いた。
  


 今回はカリガネが目的の一つだったが、マガンの群は広範囲に散らばっており、何の位置情報もないまま1・2羽のカリガネを
探し出すのは無理だった。 もう一つのシジュウカラガンを見付けたのはよほどの幸運だった。
 事前にある程度の情報を仕入れていったつもりだったが結果として準備が足りなかった。
 また蕪栗沼と伊豆沼を一日で見るのは無理だった。 

 伊豆沼の宣伝パンフレットで餌付けされたカモや白鳥と子供たちが楽しそうに遊んでいる写真を見たことが有った。その時の
印象では沼にカモが溢れかえっているような印象を受けたが、実際の伊豆沼は全体が広いせいもあって鳥たちの姿がまばらだっ
たのは意外だった。

付記(2.020年2月)
 シジュウカラガンについては近年の保存政策が実をび、2,020年2月現在では5,000羽もの群がやってくるように
なっているそうだ。 2,007年当時はまだ幻の鳥であったが、今では普通種と言っていい。