イソヒヨドリがやってきた            
                     (心ならずも子育て支援)

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                                        2025年5月

   イソヒヨドリの基本情報
    イソヒヨドリは名前の通り日本では海岸の岩礁地帯で見掛けることが多いが、ヨーロッパ南部から
   日本にかけてのユーラシア大陸南部の内陸部から海岸地方に掛けて生息する。 世界的には野山
   の鳥に分類され、日本でも内陸部への進出傾向が見られる。
    ヨーロッパから中央アジアにかけての一帯で繁殖する個体群は冬季は南アジア・アフリカにに渡っ
   て越冬する渡り鳥であるが日本では留鳥である。 北海道では夏鳥。

  
1,プロローグ 
    野鳥の世界に飛び込んだ約20年前、いろいろと教えていただいた野鳥界の先輩から昆虫の飼育
   箱に入れられたミルワームを一箱いただいた。
    「冬になったらジョウビタキが来るから朝晩出してやるといい」
    野鳥に餌付けするのは生態系を乱すから良くない・・と言われているけど「庭に野鳥を呼ぼう」という
   趣旨で野鳥の会が「バードフィーダー」というエサ台を販売しているので差し支えないと判断した。
    バードフィーダーで小鳥たちに給餌するのとどこが違うというのか・・・という感じである。
    その冬、庭でジョウビタキを見かけたので餌を出してやったら数日で餌付いた。 うちで出してやる
   餌に依存しないように1回に出すミルワームの量は朝夕とも10匹以下に制限した。
    餌を出すことで春の渡りが遅れないか心配したけど、渡りに備えて体力を付けるため餌が欲しいと
   顔を出す回数が増えた3月20日前後にジョウビタキは北の繁殖地へ帰っていった。
    ミルワームの餌になるフスマ(小麦をむいた皮・20kg・700円くらいで長期保存が効いた)を農協
   で買ってきて自分で飼育して増やした。

  
2,イソヒヨドリがやってきた
    ジョウビタキは厳しい縄張りを持つので庭に来るのは♂だったり♀だったりするものの1羽づつだった。
    2023年の12月、僅か10匹のミルワームを上品に食べ残して何度も食べにくるジョウビタキと違い、
   出した餌がすぐに無くなることから別の鳥が食べているのに気付いた。 そして12月8日にイソヒヨドリ
   が餌を食べているのを確認し、12月10日に写真撮影に成功した。
    1回目の冬を迎えている♂の若鳥だった。
        

    長期滞在はしないだろうとの予想を裏切ってイソヒヨドリの若(1W)はジョウビタキの餌を横取りしなが
   ら庭に居座ってしまった。 
    成鳥にはみられない白点が肩羽・大雨覆い・初列雨覆い・雨覆いの先端に見られ、喉から胸は薄青
   色。 下面は汚れたレンガ色で成鳥の美しさは全くない。
    イソヒヨドリの幼鳥が成鳥羽に向かってどう換羽してゆくのか見ることにし、ジョウビタキより体が大きい
   ので朝晩の餌を15匹に増やして給餌を続けた。 12月22日に撮影。
        

    庭に現れてから1ヶ月目の2024年1月11日の撮影。 露出がアンダー気味であるが1ヶ月前
   と殆ど変わっていない。
        

   1月27日 背中の波模様が薄くなり、雨覆いの白点が薄くなってきた。 胸のレンガ色が明るく範囲が
  広くなって奇麗になってきた。 イソヒヨドリは人に懐きやすいと言われるように餌を出すときは近くまで
  寄ってきて次第に鳥との距離が近くなった。
        

   2月2日  同じポーズが多いけど時にはこんなパフォーマンスも見せるようになった。
        

   2月23日 朝と夕方になると隣家の屋根の上で給餌を待つようになった。 この時期は太陽の沈む
  方向が真西より南側にあるため夕方の光線を浴びて赤っぽく写るけど撮りやすかった。
   現れたころと比べると背中の白点は摩耗によって次第に薄くなって下面のレンガ色がさらに明るく
  なり、胸の青色部分とレンガ色の部分の境目がはっきりしてきた。
   レンガ色の中にあった青い横線もかなり薄くなっているのは幼羽が抜けているからだろうか。
   全体的に背中の青色が暗い青色から明るいブルーに変わってきて更にきれいになった。

        

   3月11日  庭に現れてから3カ月が経った。 2月3日撮影の写真から16日経って背羽や雨覆い
  は摩耗して白っぽい部分は殆ど無くなり、初めて来た頃とは別の鳥にように美しくなった。
   雨覆いの先端も摩耗が進んで白い羽先が僅かしか残っていない。
   大部分の野鳥は年に1回換羽する。 その時期は繁殖が終わってからとされているので幼羽が抜け
  て本来の色が見え始めているのだろうと推測。
        

   3月20日 下面はメラニン色素によるレンガ色で胸や上面は構造色と言われる羽の構造によって
  青く見えている。 下面に若干青い横斑が残っているが現れた時と比べると大幅に減っている。
   メラニン色素と構造色は色の成り立ちが違うから青い羽がレンガ色に変わることは無い。
   青い羽は幼羽で少しづつ抜けてレンガ色が鮮やかに見えるようになった。 背中の濃い青も次第に
  抜けて成鳥に見られる奇麗な青色が残った。
        
   この後、3月26日を最後に繁殖地に行って姿を見せなくなった。 この時は1歳の若鳥が繁殖に入る
  とは思っていなかった。


 
 3, 翌 2,024年の秋
   
11月22日、遊びに来た孫息子と庭で農作業をしていたらイソヒヨドリの素晴らしい囀りが聞こえてきた。
    早々と気付いた孫が「3羽いる」 と言う。 ♂幼鳥が1羽と♀ははっきりと見ることが出来たけど1羽は
   確認できなかった。
    慌ててカメラを出してきて撮れた写真は♀だった。 この写真しかないので年齢は不詳。

        

   3羽は我が家を中心にして暫く高速で飛び回っていたが、やがて1羽を残していなくなった。
   残ったのは♂の若で昨年庭で越冬した若によく似ていた。 戻ってきたのか・・と思ったけど今は
  成鳥になっているから別個体である。 餌付くのは早く餌を出したらすぐに食べに来た。
   ちいちい・・と鳴くのでチーと名付けた。
        
   
   
11月27日 昨年現れた若♂より胸の赤味が濃く頭の青色も美しい。 今年の若の方が生まれが
    早くて幼羽の抜けが早かったと判断した。
        

    
12月28日  到着から1ヶ月経った頃の12月28日の撮影。 昨年の個体と比べて下面の赤色が
     比べ物にならないくらい美しいが、雨覆いの白点ははっきりと見えている。  
        

  
25年1月15日  飛来してからほぼ2ヶ月経った。 雨覆いの白点は摩耗して小さくなっている。
        

   
2月28日 3ヶ月と10日後。 頭から背中・胸にかけての青色も黒味が抜けて奇麗になってきた。
        

   
3月14日  成鳥と変わらないくらい上面も下面も美しくなっている。
        

  
 3月26日  そろそろ繁殖地へ行く頃だな~と思っていたら突然闖入者が現れた。 チーを押しの
    けて餌を食べている。  追い払おうとしたけど、あれ~♀じゃん・・とすぐに気付いた。
    チーのお嫁さんが来た・・と喜んだけど餌争いでは♀が強くてチーは食べられない。 隙を見て♂
   に餌を出してやっても♀が来て♂を追い払って独占。 チー子と名付けたけど1歳になっていない
   ♂はまだ繁殖入り前だし、徹底的に♀に負けているのでお嫁さんにはならないと思った。
    そして♀もそのまま居付いてしまった。 出してやっている餌はおやつ程度なので足りるはずが無
   く日中はどこかで餌を探して朝夕だけ姿を見せる。
        

   
3月29日 よく見ると♀の雨覆いの羽先に白点が見えている。なんだこの子も若い♀なのか。
    これで2羽が子育てすることは無いと思った。それにしてもどうしてここに♂がいるのが判ったの
   だろう。 不思議だった。
        

   
4月16日  繁殖地に行くと思っていた♂は一向に行く気配は無く頭から背中・胸は成鳥と見ま
    ごうばかりに美しくなった。 肩羽はかなり激しく摩耗している。 大した距離は飛ばないのに餌を
    探して飛び回っているのだろう。
     ここから離れないなら繁殖の終わる7月頃まで観察して成鳥羽に換羽するのを見る事にした。
    イソヒヨドリの♂は1羽ごとに縄張りを持つのでそのうちに♀は離れてゆくだろうと思い、実際に
   しばらしてく姿が見えなくなった。  しかし、後にこれは間違いであったことが判る。
    ♀がいつから姿を見せなくなったのかは記録を残して無く4月5日の写真が最後になっている。
        

  
 4月19日 17日から♂が姿を見せないな~と思っていたら庭にイソヒヨドリと同じくらいの大きさの
    鳥の骨が転がっているのを見付けた。 脚から足の色が緑色だったので変だなあーと思いながら
   も大きさは正にチーと同じだったので鷹にでも襲われたのかとがっかりしながら丁寧に葬ってやった。 
   その代わりに暫く姿を見せなかった♀が昨日18日から姿を見せている。
   13日ぶりの登場でこの地を離れたわけでは無かった。 白いコンクリート板の1辺は30cm。
                  

   
4月21日  食べられてしまったと思っていたチーが姿を見せた。 とするとあの鳥のガラは何だっ
   たのかな・・・・?  18日19日と姿を見せていた♀がまた姿を見せなくなった。


  
 4月29日  黒い嘴が白く見えているのは土をかき分けて餌を探しているからか・・・そう言えば庭に
   はカナヘビが生息していてちょろちょろ動き回っていたのに最近は全く見ていない。ひょっとすると
   イソヒヨドリ達の餌になったかもしれない。
    パセリに2回キアゲハの幼虫が生まれたけど2匹とも食べられてしまった。
        
 
 
  5月5日  暫く姿を見せなかった♀がまた現れて2羽で餌争いが始まった。 この頃から♂が
   よそよそしくなって(警戒心が強くなって)餌を出しても寄ってこなくなった。 
    何が有ったのか不審に思った。


  
 5月8日  夕方、餌を出してやったらいつもは一気に食べてしまうのに少し食べていなくなった。 
    変だな~と思いながら見ていたらすぐに戻ってきて餌を何匹か纏めて咥えて飛んで行った。 
   餌運びをしている・・・雛が孵っている・・・ことに気付いた。
    たとえミルワームであっても生きている虫は雛には危険。 本能のままに丁寧に何度も端から
   噛みなおして虫を弱らせ、数匹づつ咥えて運んでいった。 
    若♂が父親になった。 とすれば母親はチー子しかいない。 2羽の餌争いは熾烈で仲が良い
   と言えないのにペアを組む仲になっていた。 1歳の夏を迎えている幼鳥と思っていた♂が繁殖入
  りしていた。 イソヒヨドリの寿命は標識調査で6年以上の個体がいることが確かめられている。 
   平均寿命がどれくらいかはわからないけど繁殖を急ぐ必要があって翌年には性成熟している。
        

  
 5月12日  餌運びは2羽で行っている。 毛虫やアゲハの幼虫を咥えていることからうちが出して
   いる餌だけに依存していないことが確かめられた。
        

   
5月17日  餌争い・・・仲良く分け合って運べばよいのに。
        

   ♂♀が並んだところは殆ど撮れていなかった。 ♂の方が少し大きく見えるがほとんど同じ。
        

   ♂の威嚇を無視して♀が一方的に餌を咥えて持っていってしまう。 この頃になると雛が大きくなって
  虫を弱らせることも無く、10匹くらい咥えて持って行くようになった。
        

   餌を全て持っていかれて2匹しか持てなかった♂。 このあと巣の方向に飛ぶけど巣の場所は探して
  いない。 あえて探さない。 
        

  
   
5月19日  フェーズが変わった。 朝に出していた餌を食べに来ていたイソヒヨドリたちが姿を見せ
   なくなった。 餌を出しておくと食べてゆくけど餌が欲しいの要求が無く夕方までほとんど姿を見せなく
   なった。 餌が豊富になってうちの餌への依存度が減っているように感じた。
    ひょっとすると雛が巣立したのかもしれない・・・親が色んな虫を咥えているところも度々見かけた。
    ただし、夕方になると2羽で現れて素晴らしい囀りでこちらの気を引く。 餌を出してやると急いで咥
   えて雛に運んでいくのでうちで出す餌への依存度はまだまだ高い。
 
  
イソヒヨドリの繁殖
   イソヒヨドリの♂は自分の縄張りを持ってそこに♀を呼び込んで繁殖に入る。
   うちの庭に♀が姿を見せたのは3月26日だからその頃にカップルになって巣の準備が始まったのだ
  ろう。 
AIによれば
   「抱卵日数は約15日、巣内での育雛期間は15~18日、平均5卵で抱卵は主として♀が行う。
   巣立後は17~25日間親からの給餌を受ける。 巣立ち後は「雛分け」と言って父親組と母親組に分
  かれて給餌されることがある」
   年に2回の子育てもあるようで昨年現れた幼鳥は2回目の幼鳥。 今年現れたのは1回目の繁殖で
  産まれた一番子とすれば違いが理解できる。
   鳥類は卵を一度に数個産むのではなく数日かけて産み、揃ったところで抱卵に入る。 先に産み落と
  された卵は抱卵前から成長が始まっているから全ての雛が孵ったときには成長の差が出ているだろう。
   オオタカの子育てを観察していた時に巣内の雛には明らかな大きさの差が有ったのを記憶している。
   庭に♀が現れた3月26日から今日の5月22日で71日が経った。 5月8日に餌運びが始まって
  孵化したことがわかった。 逆算すると4月20日頃から産卵と抱卵が始まったことになり、その頃に♀
  暫く姿を見せず、♂が二日間ほど雲隠れしたことが有って小さな変化が起きていた。
   5月7日に孵化したとすると15日目になって巣立が近付いている。 暫くは飛べないだろうけどあと
  半月もすれば雛が見られるかもしれない。

  なお、ネット上にはイソヒヨドリの子育ての観察記が幾つか掲載されている。  ここで書いてきたほど
 理屈っぽくなくて面白いのでネット検索をお勧めする。

  
5月27日(火) もう雛たちは巣立ちしている頃だ。 巣のある場所の見当はついているのだけど、夕方
   餌をたくさん咥えた♀の飛ぶ方向が巣のある西から東に変わった。 どこへ行くのだろうと行方を見て
  いたら餌を咥えたまま東の方の電線にとまってこちらを気にしている。 そっと体を隠してしばらくしてか
  ら顔を出してみたら更に東に飛んでこちらを見ている。 警戒心が強いので見るのをやめた。

  
5月28日(水) 西の方の巣のある場所の辺りに♀がいて虫を咥えていた。 電線に上がったので近付
  いてみたらかっかっと警戒音を発するのでそれ以上は刺激しないように引き下がった。
  餌の要求が減っていて朝は出しておくと無くなるけど餌を要求する頻度は減った。 
  餌の要求は♀の方が強く、♂は餌を出しておいても来なくなって♀ばかりになった。
  
  
5月29日(木) ♀は相変わらず餌を取りに来るけど自分で食べることが多く持ち帰る量は僅か。
  ♂は姿が見えるものの餌を取りに来ること無く、巣立ちした雛たちの行方は不透明。
  この付近をハシブトガラスがうろついているので・・・・。

  
5月31日(土)  ついに♂♀とも姿を見せなくなったので餌出しは止めた。 イソヒヨドリは年に2回繁殖
  することが有るのでもっと安全な場所を探してチャレンジしてほしい。
 
 
 4,2回目の子育て

  
6月上旬  イソヒヨドリがまだ近くにいることが判った。 土を掘り返していて出てきた根切り虫を餌入れ
   に入れておくと無くなっている。 そして夕方に餌を出してみたら♀が食べに来た。

  
6月9日(月)  ♂のチーの姿を目撃。 巣が有るだろうと見ていた場所の近くで囀っていた。 今度は
   1回目の失敗を教訓にして目立たないようにしているようで囀りは短く、以前のように餌が欲しいと庭に
   現れる事は無くなった。 
         
  
6月10日(火) 雨が降って餌が取れないのか♀が我が屋のテラスまで餌が欲しいとやってきたので出し
   てやった。 すぐには来なかったけど暗くなる前に見たらきれいに食べてあった。 

  
6月21日(土) 土の中から出てきた根切り虫を餌入れに入れたらチーがすぐに食べに来た。 
   最近はほとんど姿を見せないのに珍しいな・・と思ってミルワームを出してやったら1匹づつ咥えて丁寧
   に噛み直して弱らせてから運んで行った。 2回目の雛が1羽だけ孵化している・・と思った。 
   ♀のチー子は抱卵しているのか姿を見せなかった。 
   そう言えば昨日はチーが来て2~3匹食べたところにチー子が現れて独り占めして食べて行ったのを
   思い出した。 今度は何羽が羽化するのかわからないが無事に育って巣立を乗り切ってほしい。
    雛に与えるために何度も咥え直してミルワームを弱らせているチー。 
         

  
6月22日(日)  スイカの手入れをしていたら餌が欲しいとチーがホッピングしながら近付いてきた。
   出してやったら1匹づつ咥えて弱らせてから運んだのは同じだったけど、チー子も現れてこちらは少し
  多めに持っていった。 多分、次の雛も孵化したのだろう。 
   餌を持ったチーはこちらが見ている限り屋根の上から動かなかった。 巣のある方向を知られたくなく
  て警戒している。 危険なのはカラスと猫なんだけどちゃんと対策は出来ているのだろうか。

  
7月1日(火)  6月21日に給餌が始まってから11日目になる。 チー子が餌を取りに来たので10匹
   ほどミルワームを出してやったら3回くらいに分けて持っていった。 雛は順調に育っている。
         


  
7月2日(木)  チー子は夕方になるとすぐそばまでやってきて餌を催促。 10匹ほど餌を出して
   やると3~4回に分けて運んで行く。 虫を弱らせずに運んで行き、餌を取りに来る間隔が狭まって
   いるので雛はかなり大きくなっていると見ている。 ♂のチーはまったく姿を見せない。




                          2025年7月