斐伊川河口探鳥記
2,009年1月20日〜1月22日
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冬鳥の季節になると毎年話題になるのが島根県の宍道湖に注ぎ込む斐伊川の河口地帯である。 今年もハクガンやナキハ
クチョウなど出会いのほとんど無い鳥たちが越冬している貴重な越冬地だ。 大陸に近いという地理的な条件があるとしても
大陸に近いのはここだけではないのでどんな環境か一度見ておきたかった。
写真を撮る為にデジボーグを持っていかなければならない。 列車や飛行機で運ぶのは大変だし現地でレンタカーを借りなけ
ればならない。 なるべく安く上げる為に家内と二人で車で出かけることにした。
出雲大社にも参詣することとし、二泊三日で日程を組んだ。 全線高速道路で距離・450kmは6時間くらいと予想した。
1月20日(火)
天候:薄曇り 気温12℃
08時03分:自宅発 08時11分:東名阪・桑名IC入り 13時37分:山陰自動車道・宍道IC出
13時50分:斐伊川河口着
まずはベニヒワポイントに行ってみた。 先客さんに挨拶して状況を聞くと今日は出ていないが、近くにナキハクチョウがいると
教えてくれた。 ナキハクチョウは松江の方と聞いていたので、近くに来ているのは思いもかけないことだった。
早速行ってみたら一枚だけ水を張った田んぼに10羽くらいのコハクチョウがいてそのうちの1羽が
ナキハクチョウ
だった。
水の中に頭を突っ込んでしきりに餌を食べている。 時々顔を上げると頭から頚にかけて泥だらけだ。 汚いナーと思いなが
ら写真を撮った。 きれいな写真は餌場の方で撮り直せばいい。
出雲空港の南西側で水が張ってあるのはこの田んぼだけだった。
写真を撮ったあと斐伊川の右岸河口付近の田園地帯にハクガンを探しに行き、たくさんのマガンの中から難なくハクガンを
見付けた。 大きくて真っ白なのでとても目立った。
写真を撮るにはちょっと遠かったが写真を撮っているうちに次第に遠ざかってしまい、何が有ったのか飛び立って別の田ん
ぼに移った。 この写真はかなりトリミングしたもの。
ゆっくり移動しながら他のマガンを仔細に見て行ったらカリガネかと思う個体がいたが嘴が違う。 改めてハクガンに少しづつ
近寄りながら写真を撮ったが相変わらず遠かった。
ハクガンを見ているうちにマガンの群れの中にアカツクシガモが1羽混じっているのに気付いた。 琵琶湖以来の邂逅だった。
運が良ければ琵琶湖のときより近くで撮れそうだと期待に胸が膨らんだ。
ハクガンもアカツクシガモもなかなか寄ってきてくれない。 今日は目的の3種類のうちナキハクチョウとハクガンの2種類が撮れ
たので3時過ぎにベニヒワポイントに戻った。 状況を聞くと相変わらず音沙汰無しとの事。 アカツクシガモがハクガンと一緒にい
たとお教えしたら先客さんは諦めてそちらの方に行き、私たちは薄暗くなってきた5時まで粘った後で宿泊先の玉造温泉に向かった。
東名阪・桑名IC(8時11分)−第2名神ー名神ー京滋バイパスー名神ー中国自動車道ー米子自動車道ー山陰道ー 山陰自動車
道・宍道IC(13時37分) 高速料金:9,200円 本日の走行距離484km 22日朝・ガソリン40g給油
1月21日(水)
天候:薄曇り→曇り→雨 気温8℃
午後から雨の天気予報が出ていたのでどんよりと暗くなるのが心配だったが午前中はまずまずの曇り空だった。
旅館の手違いから朝食が遅れたため出発も遅くなってベニヒワポイントに着いたのは9時前だった。 先客は不在だったのでベ
ストの位置に車を停めて三脚を出していたら同行の家内が「来ているよ!」と叫んでいる。 慌ててカメラを出して撮り始めたがな
かなかじっとしてくれないうえに枝が被って全身が見えず、見えてもマニュアルフォーカスの悲しさからピントが合わなかった。
気付いたらどこにいたのか数人の人が写真を撮っている。 この中に顔見知りの名古屋のOさんがいてびっくり。
ベニヒワは多分10分もいなかったと思う。 家内によれば群れは5羽で全部♀タイプだったそうだ。 撮った写真を見たら確かに
♂の成鳥は写っていなかった。
この個体は胸がほんのりと赤く、頬もうっすらと赤いので♂の若鳥と思う。 ♀だけの群れと言うのは不自然だ。 この群れは
5羽だったが、友人は別の日に12羽の群れがいてそのうちの2羽は若い♂だったと言っておられた。
群れはしきりにヤシャブシの実を食べていた。 時には下に落ちた実も食べに下りていた。 鳥たちにとってヤシャブシはよほど
魅力的な御馳走のようでこれを好む鳥たちは多い。
ベニヒワとの出会いはワンチャンスだった。 ベニヒワが去ったあとOさんは「一昨日来たけどベニヒワだけ見られなかったので
一泊追加した」そうで、これで帰れると喜んでおられた。
私たちはナキハクチョウの餌の時間(8時頃地元の人が餌をまいているとのこと)には遅すぎるのでハクガンを撮り直そうと斐伊川
河口に行った。 なかなか見付からなかったがマガンの中にカリガネを見付けた。 昨年の鈴鹿市のカリガネ以来の嬉しい出会
いだった。 数羽いるとのことだが別々に行動しているようで1羽しか見なかった。
カリガネは本当に可愛い顔をしている。 左のマガンの若鳥がカリガネに似ているが嘴や頭の形が違う。
斐伊川の堤防で写真を撮っている人がいたので行ってみたら「ナキハクチョウかアメリカコハクチョウかわからないが・・・」とはる
か彼方の中州のコハクチョウの群を撮っていた。 フィールドスコープで見たら昨日田んぼにいたナキハクチョウだった。 この距
離では証拠写真程度にしかならない。 昨日はよほどの幸運に恵まれたようだった。
右から3羽目がナキハクチョウ。 アメリカコハクチョウは見付けられなかった。
ハクガンは見付かったが昨日以上には近付いてくれなかった。 その代わりにアカツクシガモが10mくらいの距離にいて撮り放
題に撮らせてくれた。 琵琶湖ではかなり距離が有ったのでラッキーだった。
ここの鳥たちは一昨年伊豆沼・蕪栗沼で見た車を乗り入れるだけで飛び立ってしまう鳥たちより人間に対して友好的で静かに
車で近付く限りあまり恐れなかった。
昨日以上に近付いてくれないハクガンは諦めて昼前にもう一度ベニヒワポイントに戻った。 待っている間にヤシャブシにとまり、
さらに草むらに降り立った小鳥。 カメラの液晶画面でみていた時は種類が判らなかったがこうしてみるとホオアカだ。
名古屋周辺では冬に芦原や草むらで見かけることがあるが、こんな寒い場所でも越冬している。
目的の3種類は無事にゲットできたので午後は出雲大社に行った。 もう少し開けた場所にあるのかと想像していたが、神域は
思ったより狭かった。 本殿改築・修理のため平成の大遷宮中でご神体・大国主命は本殿前の御仮殿に移されていた。
工事が終わってお戻りになるのは2,013年の5月とのこと。
伊勢神宮の本殿は20年に一度作り変えられるので質素なものだが、こちらの本殿はどっしりと風格があった。
言い伝えでは太古の昔は高さが100m近くもあったとされ、現在は24mとビルで言えば6〜7階の高さだ。
工事中の本殿 御仮殿
八雲立つ風土記の丘も興味があったが資料館に陳列されているのは土器の類と想像が付く。 そこはパスして一度見ておきた
かったのが一度に358本の銅剣が出土して大変な話題になった荒神谷遺跡。 1,984年8月だった。
遺跡の一帯は古代ハスを植えたハス田や古代米を栽培する田んぼ。 資料館が作られて広大な史跡公園が作られていたが、
平日とあってギャラリーはいなかった。
谷は思ったより明るかったが何故ここに埋められたか何の変哲もない場所に見えた。
宿舎に戻る前にもう一度ベニヒワポイントに寄ったが何事も起こらず、雨が降っていたので宿に戻った。
本日の走行距離:124km
*斐伊川河口周辺の環境
斐伊川を越えて北側の地域は国道431号線までしか行かなかったので島根半島側はどうなっているかわからなかったが、宍道
湖の南岸側は山が迫ったところに国道9号線や山陰本線の鉄道が通っていて水田は無かった。
水際で水田が広がっているのは宍道湖西岸の斐伊川から国道9号線の間、地方道23号線(斐川一畑大社線)に囲まれた一帯
でこの辺りにマガン・コハクチョウが集まっており、珍しい鳥たちはこの地域に入ることが多い。
面白いのはコハクチョウのいる場所とマガンのいる場所は別々で一緒にいる所は見られなかった。
カリガネ・ハクガン・アカツクシガモはマガンの群と行動を共にし、斐伊川と五右衛門川との間の地帯で餌を探していた。
ナキハクチョウはコハクチョウと行動を共にし、出雲空港の近くに1枚だけ水を張った水田
(冬季湛水田)
があってここでコハクチョウ
とナキハクチョウが餌を食べていた。
斐伊川河口は干潟にコハクチョウやタゲリの群れ・ハマシギの群などがいたが広大すぎて鳥たちの撮影は難しい。
写真ではわからないが、コハクチョウがたくさん写っていてこの中にナキハクチョウが混じっていた。
この一帯に鳥たちが集まるのは湖を控えた水田地帯であり、島根半島によって北からの強い風が遮られることも大きいと思う。
勿論、大陸に近いという地理的な条件が最大だろう。
*冬季湛水田
コウノトリの里・豊岡市ではコウノトリの採餌場として冬の間も水田に水を溜めるようにしたところコハクチョウがやってくるよう
になっってびっくりしたそうだ。 湛水田を湖沼と見做して採餌場・休憩地・ネグラに利用する。
21日の夜9時からのNHKニュースでたまたま松江市の農家の冬季湛水田の話題を放送していた。 農家の話によると冬季
湛水田にしてコハクチョウがやってくると次のような利点が有るそうだ。
@ 水田の中を歩き回って耕してくれる。
A 水中の雑草の種や球根・根っこを食べてくれるので雑草の抑制効果が有るうえに糞が肥料になってくれる。
B コハクチョウが来てくれることで癒しになる。
と3つの点を挙げていた。 水深は10〜15cmが最適との事。
出雲空港の南西部の湛水田がまさにこれにあたり、私たちが行った日にコハクチョウとナキハクチョウが来ていたわけだ。
同じ県内の安来市でも実施している地区があってコハクチョウが訪れているのを車窓から眺めた。 冬季湛水することによって
雑草の発生を抑え、無農薬・無化学肥料で米作り。 田植え後に田んぼに泥鰌を放って育て、収穫した米は「ドジョウ米」として
販売しているとの事。 付加価値を付けているわけだ。
こういう試みは最近各地で行なわれるようになっているが、思うのはこの地方の休耕田だ。 最近は乾田化が進んで休耕田に
水を張らない農家が増えてきた。 水を張っておけば雑草の発生が抑えられ、シギたちの格好の休養地となるのにとても残念だ。
1月22日(木)
天候:晴れ→曇り→雨 気温5℃
ベニヒワの♂成鳥が撮れていないので午前中再挑戦しようと思ったが、12羽の群を見ている友人に相談したら♂の成鳥はやは
り見なかったとのこと。 それで諦めが付いたのでちょっと寄り道して玉野市に出ているカラアカハラを見に行くことにした。
太平洋側は雨の予報が出ているが瀬戸内は大丈夫のはず。
8時5分:宿舎発ー8時13分山陰道・松江西IC入り、10時24分山陽自動車道・早島IC出。
10時56分現地着。
走行距離:204km 高速料金:350円+3,450円=3,800円
現地では地元新聞でカラアカハラが報道されたそうだが、地元の方と話した結果ここでは詳細場所は書かないことにする。
今にも雨が降り出しそうな空模様の元で「三重県から来た」と話したことで地元の人たちからは大歓迎を受けたがカラアカハラ
は歓迎してくれなかった。 とても愛想が良いと聞いていたが、餌に吊られてのこと。 地元の人は餌付けに反対していた。
そんな具合で一度は芝生の上に出てきたがもう一度は木の枝にとまったものの枝被り。 暗かったのでSSが上がらず急いで
いなくなったので写真にならなかった。 見られただけでも良しとしなければ。
アカハラと違って背中の青色がとても美しかった。 まだ若い個体との事。
木の枝にとまってしばらくじっとしていたが、これではどうしようもない。 そのうちに雨がぱらつくようになってとても寒く、さっぱ
り出てくる様子が無いので何枚か撮れただけで満足することとした。
雨では仕方がなく、昼食をとってから後ろ髪を引かれながら13時25分に現地を後にした。
13時25分現地発ー13時43分・水島IC入りー瀬戸自動車道ー山陽自動車道ー中国自動車道ー名神高速ー第2名神ー
東名阪ー桑名IC・18時02分ー 18時10分帰着 348km
高速料金:7,000円 本日の走行距離合計:552km オートドライブ:105kmに設定
3日間合計 高速道路代 20,000円 走行距離:1,160km ガソリン使用量:98g 10,094円
高速代の合計20,000円は正直言って痛かった。 高い! 不況時代を迎えてこの料金はネックになるらしくどの高速
道路も車が少なかった。 特に米子自動車道は通行が疎らで日本海側と太平洋側の断絶を思わせた。
西日本の大動脈となる山陽自動車道も中国自動車道もガラガラ。 姫路から神戸辺りで若干混んで来たが京都周辺も
ガラガラ。
第2名神から東名阪に入ったところで急に大混雑となった。 途中区間が無料の名阪国道が中京圏と阪神を結ぶ大動脈
となっており、車線変更もままならないほどの大混雑で対向車線は車が途切れることがない。
いかに高額の高速料金が経済活動に重くのしかかっているのかよくわかった。
今回の遠征に当たって事前に情報を提供して下さった皆さん、現地でお会いして色々と教えていただいた皆さん、大歓迎して
くださった玉野市の皆さん有難うございました。 篤くお礼申し上げます。
米子自動車道から見た大山がとても綺麗だった。
お終い