白変種の鳥たち       目次に戻る  
                           (色素異常の鳥たち)

 
 
2,012年1月、長良川に浮かんでいた白いカンムリカイツブリはとても美しかった。 野鳥界では体の一部や全体
が白い白変種の鳥たちが稀に観察され写真に残されている。
 これらの鳥たちはしばしばアルビノと混同されることが多いが、アルビノは視覚障害を伴うため自然界での生存は難
しいので、突然変異によって出現した白変種(部分白化)である。


1、アルビノ
   メラニン色素にかかわる遺伝子情報の欠如によって先天的にメラニン色素が欠乏する白化現象で病気である。 
   体毛や皮膚ばかりでなく、瞳孔も毛細血管が透けて見えるので赤色となって眩しいため視覚障害を伴う。 
   動物界では白い体が目立つため天敵に狙われやすく、更に視力障害によって運動が制限されるために自然界で
  の生存は難しいとされている。

2、白変種
   往古から長く厳しい環境を生き抜いてきた生物にとって、その過程において氷河期に保護色となる白変の遺伝子
  は、生存のためには有利な資質であり、この白化する遺伝情報を基本的な遺伝子として伝えてきた。 通常は隠
 されている情報が突然的な変化で発現されたのが白変種とされる。 
  メラニン色素の生成能力は正常なので瞳孔は黒く、欠乏した色素の部分は抜け落ちて白くなる。 

3、これまで観察した白変種
   これまで11種類を観察したが、白変種を観察する機会は多くなく大変貴重である。 体全体が真っ白なもの、一
  部が白いもの。
   また、普通種と比べて白っぽいものなど様々だった。  出来るだけ写真を撮って記録として残しておきたい。


 
@ コチドリ(2,004年9月16日  四日市市)
   体全体が純白でとても美しかった。 瞳孔と嘴が黒く、脚は本来の黄色い色をしている。
   黄色いアイリングは見えない。
   
 

 
 
A ハクセキレイ(2,005年8月28日 松阪市)
    上のコチドリより羽の黒い部分が多い。 瞳孔は黒く嘴は黄色。
   
 



 B ハクセキレイ(2,007年1月28日  弥富市)
   鍋田干拓地で一冬過した白変種のハクセキレイは白雪姫と呼ばれるほど美しい個体だった。
   真っ黒のはずの嘴のピンク色がとても奇麗だった。
   



 
C シロハラ(2,007年1月29日  名古屋市)
   名古屋市の都市公園に現れた部分的に白いシロハラは大変な話題を集めて大勢の人が観察に訪れた。
   これまで観察した3種と比べると白変が部分的であるのが興味深い。
   
 


 
D スズメ(2,008年3月25日  田原市)
   赤羽漁港で観察したスズメはメラニン色素などの色素過剰で真っ黒だった。 白変種のスズメは比較的観察されて
  いるようだが、黒変のスズメは大変珍しいということで、ネットで調べるとあちこちで話題になって新聞種にもなってい
  た。
         

   最初は油に汚れたか煤で汚れているのかと思ったが、一緒に居るスズメは普通でよくみるとこのスズメも汚れて
  いなかった。 あまりにも黒く逆光だったので写真はまともにならなかった。  参考まで・・・。  
 
         


 
E ハシブトガラス(2,008年11月12日  四日市市)
    体全体が白く嘴のみ黒い部分があった。  警戒心が強いのは普通のカラスと同じで、牛舎を中心に活動していた。
 
 


 
F ハシビロガモ(2,010年10月21日  愛西市)
   ♀タイプの白っぽいハシビロガモはコガモやオカヨシガモなどの群れの中で一際目立っていた。  全体的に黒い
  色素が抜け落ちている印象で、翼鏡の緑色も抜け落ちて青く見える。越冬を期待したが年が明ける前にいなくなって
  しまった。  
  
 


 
G カンムリカイツブリ(2,012年1月29日 愛西市の長良川)
   最初に見掛けた時はコハクチョウと思ったほど白く輝いて目立っていた。 写真を撮ってみたら首から頭にかけて上
  のハシビロガモと同じように若干カーキ色になっていたが体の方は白くて美しかった。 
   メラニン色素が若干足りないという印象だ。
   右の写真の上側はカンムリカイツブリの冬羽で頭や背中に色が付いているが、白変種の個体は純白に見える。
 
 


 
Hハシビロガモ(2,019年1月30日 愛西市)
  Fの個体よりも白く見える♀タイプのハシビロガモ。 長い滞在を期待したけど出会いは一度だけで姿が見えなくなった。
 
 


 
I モズ (2,023年2月27日 三重県菰野町)
  過眼線が無いので♀。 本来であれば風切り羽や雨覆い・尾羽に黒や青色部分が有るはずだがすっぽり抜け
 落ちて白くなっている。 もし♂であれば過眼線の色素が抜けた部分が白くなるはずなので♀である。
  全体的にもう少し白いかと思ったけど茶色味が強くて可愛かった。 虹彩の色は黒いので部分白化。
  
        
 
  
右側から見ると眉斑はほとんど見えないけど、左側には僅かながら眉斑が見えている。  
        

  
目は黒く見えているけどアップにしてみると虹彩は赤い。 瞳は黒いのでカメラを構えているこちらも良く見えていて
 近付くのを許さなかった。 嘴からも黒い色が抜け落ちている。
   
        


 
 J ムクドリ (2,024日1月19日 愛西市)
   愛西市はホシムクドリが毎年複数羽越冬して定期的な越冬地として定着してきた感がある。
   当日もムクドリの大きな群れの中からホシムクドリを探していたら電線に止まっているムクドリの中
  に白いムクドリが混じっているのに気付いた。 部分白化のムクドリだ!
       

  近くで撮れないものかと待っていたらたまたま目の前に下りてきた群の中に混じっていた。 何枚か
 撮りたかったけど農家さんが来たので撮れなかった。 白いムクドリは群の中でも居づらいらしく数日で
 姿が見えなくなって残ったのはこの写真だけ。 ふらりと現れてあっという間に消えてしまった。
       




   普通種であっても注意深く観察して白変種を見逃さないようにしたい。


                  以上、2,023年3月現在