絶滅が心配されるアカハジロ 2022,6,1
野鳥の会三重の会誌「しろちどり」110号に「危機の鳥、アカハジロ」という記事が掲載されていた。
アカハジロは近年数を減らしており、最近の全世界の推定個体数は150~700羽と推定されているとのことで
あった。
国際自然保護連盟(IUCN)がレッドリスト(絶滅の恐れのある野生生物の種のリスト)を毎年出しているが、その
中でアカハジロは「(CR)ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種 (レッドリストとしては絶滅を除く
絶滅危惧トップランク)」に分類されている。
使用している4種類の図鑑には稀な冬鳥としか紹介されておらず、環境省レッドリスト2019では情報不足(DD)と
して掲載されているだけ。 危機感はまったく感じられなかったのでとてもびっくりした。
危惧されていることは他にもある。 日本に飛来してくるアカハジロにメジロガモとの交雑種がかなり多く見られる
ことである。 繁殖地も越冬地も異なる両種が交雑をする機会は少ない筈であるのでとても不思議である。
繁殖地あるいは越冬地に知られていない両種の重なる場所が有るのだろう。
ちなみに、メジロガモは日本では繁殖地からも越冬力も遠いので目にする機会は少ないが、IUCNのレッドリスト
ではNT(準絶滅危惧種)に指定されていて当面は絶滅の危険は少ないと見られている。
この冬、ハイブリッドを含めて同時に3羽のアカハジロ系のカモが三重県北勢地方に現れた。 交雑種が多いとい
うことからこれまでアカハジロとして撮影してきた個体を再検証してみた。
まずは2,009年1月7日に尾張旭市の池で撮影したアカハジロの♀。 胸脇の白い部分が少し少な目だがしっか
りと出ている。
2,013年1月31日に琵琶湖で撮影した純系と見られる♂。 光線の具合がとても良かったので頭の緑色と脇の白さ
が鮮やか。 他の場所で撮影した♂の写真は有るけどこれが純系の基本と思う。
2,021年から22年にかけての冬に三重県の四日市市・いなべ市の池で越冬したアカハジロの♂。 他の池と行き
来していたようで撮影機会には恵まれず、鳥との距離や光線など条件は悪かったけど、頭の色や体側の白い色から
純系の♂とみられる。
2,006年2月5日に大阪市の公園の池で越冬したアカハジロとメジロガモのハイブリッド。 後頭部は緑色であるが
頭はメジロガモのように赤味を帯びており、胸脇の白い部分は少しだけ出ていた。
2,022年2月9日、木曽川右岸の河口から1.5km上流付近で撮影したアカハジロの♂2羽。 とても美しかった
けど、右側個体は頭がメジロガモのように全体的に赤味が強く、脇腹の白色部が小さい。
左側個体も右側個体より頭部の緑色は濃いが頭頂部が赤味を帯びており、体側の白色部はまったく無いので純系
のアカハジロではなくメジロガモの影響が強く感じられる。
上の2羽のうちの1羽。
四日市市の池で撮影したアカハジロ。 両種とも胸の色は下腹部には至っておらず胸で止まっている。 色の違いは
撮影時の光線による。
ここまできて気になるのは2,021年から22年にかけて琵琶湖で越冬したアカハジロの♀である。 黒味を帯びた
頭部や嘴付け根の赤い斑は申し分ないけど、体側の白い部分が見られないことである。
同一個体であるが、光線の状態によってはこんなふうにも見える。 1枚目の♀と比較してこれを純粋なアカハジロ
の♀としてよいのか疑問を感じる。 おそらくメジロガモの血が混じっているだろう。
ハイブリッドも含めたアカハジロの飛来は♂の方が数が多いが、♀にハイブリッドが混じっていてもおかしくない。
純系の♀と思って写真を撮りに行ったので残念であったが、翻って言えばこれも恵まれた出会いだったかもしれない。
写りは悪いけどメジロガモの♂。