野鳥の世界では年によって普段はまったく姿を見せない鳥や、ごく小数がたまにしか現れない鳥たちが複数羽
で現れることがある。
 また、珍しい鳥たちがあちこちに同じ時期に姿を見せたりすることも時々あり、それらの特異な例を私が記録と
して残してあるおおよそ20年間の範囲で纏めてみた。 
 個人の記録なので名古屋周辺から関西にかけての限定された記録であることをお断りしておく。
 なお、特異日という言葉は気象用語として存在するが、特異年という言葉は存在しないようである。


 2,005年 1月
  愛知県一色町の池に
アボセットが5羽で飛来。  1月8日に写真を撮りに行った。  
  初列風切り羽が褐色みを帯びていたので第1回の冬羽。  脚は青みを帯びていた。  


 
2,005年12月〜2,006年1月
 12月17日にいなべ市の両ヶ池に18羽の
コハクチョウが舞降りた。その後、背割り堤防にも移動したようでこ
の年木曽川右岸の背割り堤防際で2月23日までの間に一日最大108羽のコハクチョウをカウントした。 
 成鳥・幼鳥の内訳は数が多すぎてカウント出来なかった。


 2,006年2月 
  関西の友人から
キクイタダキが出ているとの連絡をいただいた。 当時、キクイタダキは10年に一度しか
 現れないと聞いていたので2月5日に堺市まで見に行った。
  当時かと思うけど名古屋城公園の探鳥会でキクイタダキが観察されていたと後で知ったので名古屋近辺に
 も来ていたかもしれない。

 2,006年の3月〜4月
  庄内緑地公園を約30羽の
マミチャジナイが通過していった。 これだけの数が集団で通過するのは珍しい
ことであった。 


 
2,007年1月
  岐阜市の「長良川ふれあいの森に」
ハギマシコオオマシコの群れが現れたので1月10日に写真を撮りに
行ったものの、ハギマシコは条件が良くなかった。


 
2,006年〜2,007年の冬
  この冬は各地に珍鳥が現れて賑わった。

 @津市の白塚漁港で
ハマヒバリが越冬。
  2,006年12月25日・2,007年1月12日・3月19日・3月28日と通って冬羽から夏羽へと換羽してゆく
  様子を観察した。  顔が白くなった程度であまり変化は無かった。  
  左は12月25日で右は3月19日の撮影。 
  一冬を通じて観察者は少なく、ハマヒバリは漁港の駐車場でヒバリとともにのんびりと餌を漁っていた。
  


 A堺市の大泉緑地公園で
キガシラシトドが越冬した。
  こちらは大都会大阪に隣接していたので大変な人出となった。 葦原で活動して最初の頃は朝しか出ないとの
 ことだったので早起きして7時頃には現着していたけど、次第に人慣れしてほとんど一日中地上で活動するよう
 になった。 
  1月25日を皮切りに4月9日・20日と遠征して冬羽と夏羽を見ることが出来た。
  左は1月25日の撮影。 右は4月20日の撮影。  ハマヒバリと違って美しく換羽した。
  


 B万博記念公園に
コイカル♂が1羽入っていたので1月25日についでに見てきた。


 C松阪市の海岸に美しい
ワシカモメの成鳥が1羽入った。 この辺りでは珍鳥なので2月27日に見に行って写
  真を撮ってきた。 縞模様が有るのは初列風切り羽だけかと仔細に見たら雨覆いにも入っていた。
  


 D2,006年11月17日に愛西市の蓮田で日本での記録は有るものの未公認だった
ミズカキチドリが発見されて
  越冬。  翌春5月初旬まで滞在した。 
   11月17日の初認日と、2,007年4月25日の夏羽に換羽した私の終認日。 
  


 E愛西市の蓮田で
エリマキシギが7羽越冬した。 エリマキシギの越冬は珍しいことでは無かったけど、1羽ない
  し多くても2羽だったので7羽も越冬したのは稀有なことであった。
   写真左は11月7日の撮影で右は翌年2月18日の撮影。 第1回冬羽の幼鳥が中心で♂4羽に♀が3羽。
   この年はミズカキチドリの方に力を注いでいたので折角のエリマキシギの越冬なのに右の写真が最後になっ
  てしまった。
  


 F22,007年2月中旬、愛西市の背割り堤に6羽の
ヒシクイが現れて1週間ほど滞在した。 ヒシクイとオオヒシ
  クイは食性の違いから体の大きさや頭の形・嘴の形が違うが、比べてみるとその差はとても微妙でありオオヒ
  シクイは琵琶湖まで南下してくるけど、ヒシクイは伊豆沼が南限と言われている。
   この6羽はヒシクイ型であるが、多分オオヒシクイなのだろう。 右側の写真は湖北で撮影したオオヒシクイ。
  



 2,007年8月
  東海地方を多数の
キリアイの幼鳥が通過していった。  2,020年頃にも通過が有ったが・・・。
  



 2,007年8月23日
  愛西市の鵜戸川河畔に多数の
ショウドウツバメが現れた。 電線に止まっているのをカウントしたらおおよそ
 5,000羽くらいで壮観だった。 以後、この時期になると探しに行っているが最大でも300羽くらいとこれだけ
 大きな群に遭遇したことは無い。
  

  

 
2,008年1月
  1月3日と4日に背割堤防で南下してゆく白っぽいタカとすれ違ったので写真を撮った。写真を見たら
ケアシノ
 スリ
だったので友人に連絡したら木曽岬干拓地に10羽くらい入っているらしいとの事。 5日に行って8羽を確
 認。
  大陸が大寒波のため餌の獲れないケアシノスリの幼鳥が1月早々大挙して日本に飛来、湖北の水鳥センター
 付近を約30羽が通過してそのうちの一部が南下してきた。 琵琶湖周辺や大垣市でも目撃した。
  1月26日には5羽になり、2月1日から4羽、4月11日には1羽と減って行き、4月13日に最後の1羽を見送っ
 たつもりだったが、当日の写真を見ると2羽が絡み合っていた。
  今回目撃した10羽は全てが幼鳥だったが、2,009年12月24日に成鳥が1羽木曽岬干拓地を通過していっ
 た。

  餌を探す独特のポーズ。 餌獲りに農耕地の方に出てくることは無く、葦原でネズミを捕獲していた。
  右は最後の2羽のうちの1羽。 この日も精力的に餌を探していたので無事に北帰したと思う。
   



 
2,008年1月〜3月
  豊明市に
コミミズクが複数羽入ったので何回か見に行き、近くの休耕田にコジュリンが出ていたのでセッカの
 冬羽などと共に写真を撮ることが出来た。 コジュリンは休耕田の葦原を焼いたあとに出ており、冬鳥たちの好む
 環境を知ることが出来た。
  この後、コミミズクの場所は殺鼠剤が撒かれ、餌になるネズミが駆除されて翌年からは出なくなったけど、10年を
 経た頃から復活して2,021年から22年の冬にかけて大変な人が集まった。
  その場所も工業団地になると聞いたので23年はどうなることやら。



 2,008年2月〜3月
  2月10日に鈴鹿市の御座ヶ池に7羽の
カリガネと2羽のマガンが舞い降りて3月中旬まで滞在した。
  ケアシノスリと同じように大陸の寒波によって餌が採れずに迷い込んできたのだろう。

  写真左は2月11日の撮影。 カリガネはたくさん見たけど、水に浮いているのを見たのはこの時限りで、池畔と
 池の上が安全な逃避場所とネグラになっていた。
  右は餌場の粗く起こされた水田での撮影。飛来当時は餌場に行く光景は見られなかったが、3月15日の終認
 前には積極的に餌場に行って渡りへの体力を増強していた。
  

  
 
 
2,008年の夏
  鈴鹿川の派川河口干潟で30羽近い
ミヤコドリが越夏した。 三重県の四日市市から松阪市にかけての海岸で
 越冬するミヤコドリは定着して多い年では100羽以上を数えるまでになったけど、越夏したのは知る限りではこの
 夏が初めてと思う。 
  この夏、派川河口では数に変動はあったものの多くのミヤコドリが越夏、若鳥だけかと思っていたけど1羽づつ
 見て行ったら成鳥も沢山いた。  首に白い輪が入っている個体もいた。
 左は首に白い輪が入っている個体。 脚の色や嘴を見ると若い個体が換羽しているかもしれない。
 8月13日撮影の右側の写真には20羽が写っていて、本流河口との間を行き来していた。 
  



  この秋はあちこちに
イスカが出ているとのニュースに接して10月29日に岐阜県の高鷲町、12月1日に豊田
 市の三河湖まで出掛けた。 イスカは地域によっては普通種かもしれない。
  

  



 
2,008年11月22日
 
 四日市市楠町の稲刈りの終わった水田に11羽のナベヅルが降り立った。 成鳥が9羽と幼鳥が2羽。
  この地方にナベヅルが飛来するのは珍しいことではないが、11羽も纏まってやってくるのは珍しい。
  この11羽は26日に鈴鹿市に移動、その後伊勢市の水田地帯で越冬した。

  ナベヅルは2,021年11月中旬に48羽が伊勢市に飛来し、3月16日まで滞在して越冬した。
  この時の様子は「野鳥の会三重」の会誌「シロチドリ」に詳しく掲載されている。
  ツルの越冬地は出水市が有名であるが、感染症などの事を考えると分散して越冬するのが好ましいので、
 伊勢市が越冬地として定着してくれるのを期待する。

  左は11月23日四日市市で撮影。 右は鈴鹿市を飛び立って伊勢市に向かう群。
  

  

 
2,009年1月
  島根県の斐伊川河口に
ナキハクチョウが入った。ナキハクチョウは北米北西部に生息しているが、絶滅寸前
 まで数を減らしているうえに長い渡りをしないので一度きりしか会えない。 ハクガン・アカツクシガモ・カリガネ・ベ
 ニヒワと会いたい鳥たちばかりだったので2泊の予定で出掛けた。
  現地に到着して先に来ている人たちに挨拶したら、ナキハクチョウはすぐ近くの出雲空港の近くの1枚だけ水の
 入った田んぼにいると教えてもらってすぐに会うことが出来た。 米子の水鳥公園で餌を貰っているから翌日そち
 らで見ることにしていた。
  翌日は斐伊川河口にいて写真距離では無かったのでこの出会いは幸運だった。
  ナキハクチョウは現在(2,022年)では保護活動によって数万羽まで回復しているとの事なのでまた迷い込ん
 でくる事もありそうだ。
  

 マガンに混じって田んぼで餌を漁っていた
アカツクシガモ。  1羽だけだった。
  

  
カリガネは数羽いると聞いていたけど、、見つけたのはマガンに混じっていた1羽だけだった。
  

 
ハクガンもマガンに混じって1羽だけだった。
 ベニヒワはナキハクチョウの近くの堤防のヤシャブシの木に現れるとの事だったけどなかなか姿を見せなかった
 が、粘っていたら♀タイプが数羽現れた。 一人でいたはずなのに夢中になって撮っていたらいつの間にか数人
 のカメラマンが取り囲んでいた。 この人たちいったいどこから沸いて出た?
  

 玉野市のみやま公園に
カラアカハラがいるというので帰りに寄ってみた。雨模様の夕方はうす暗くてSSが上が
らなくて写真にならなかった。
  


 2月には岐阜市の公園に
オオマシコの群が入った。 オオマシコは2,007年の1月にも同じ場所で群が見ら
れた他、何回かたくさん見られた年があるけど、自分の記録としては7年1月しか残っていなかった。
 左は成鳥の♂で右は成鳥の♀。 
  


 
2,009年2月には三田市の有馬富士公園の池にヒメハジロ、宇治市の木幡にノハラツグミと、レアものの
2種が入ったのでヒメハジロは2月12日、ノハラツグミは2月18日に見に行った。
 池が大きかったのでヒメハジロは近くでは撮れず、ノハラツグミは警戒心が弱かったのでしっかり撮れた。
  



 
2,009年3月
 
レンジャクがたくさん通過した。 レンジャクの多い年は少なくないが、この年の岡崎公園は数十羽が入り、写真
を撮りに行った3月5日は二日前に降った雨で出来た水溜りに入れ替わり立ち替わりヒレンジャク・キレンジャクが
水を飲みに降りてきて壮観で、カメラマンが押し寄せていた。
 当日の日記には凄かったと書いてあった。
 近くの公園に越冬の
ハチジョウツグミオオアカハラが出ていたので併せて見てきた。
  



 
2,009年から2,010年にかけての冬は湖北水鳥センター付近に色んな珍しい鳥が入った。

 @
ハクガン
  
2,009年12月7日にハクガンの幼鳥とヘラサギが入っているとの情報を貰って見に行ってきた。
  左は12月7日の写真で、右は翌年1月11日の撮影。 1ヶ月で肩羽が伸びて白くなっていた。
 
  


A
1月サカツラガンが入ったので再度遠征。 初見であった。  ガン類の中で最も大きい。
  コハクチョウなどと共に田んぼで2番穂など同じものを食べていた。 見栄えは良くないな〜!
  


B
ハイイロガン
  
2月にはハイイロガンが1羽のマガンと連れ立って3日ほどで沖縄から飛んできた。 一度奈良に降りて数時
 間の滞在後に湖北に向かったことまで判っている。 これも初見であった。
  右の写真の後ろ側に写っているのが一緒に飛んできたマガン。 滞在がどれくらいだったか残念ながら記録
 を残していなかった。 
  


C
サンカノゴイ
 サンカノゴイは2回目の出会い。 3月19日に敦賀半島遠征の帰りに寄ってきた。 
 前回の出会いは公園をミミズを探してのそのそと歩いていたけど、本来の生息環境はこちらなのだろう。
 葦に隠れて全身は見えなかった。 右側は
ヨシゴイと同じように擬態しているところ。
 撮影は3月19日
  


D
ヘラサギ
 ヘラサギとの出会いは多いと思っていたけど、クロツラヘラサギと比べると少なかった。 12月7日にもいた
のだけど眠りこけていて写真は撮れていなかった。 
 2羽いたけど1羽は隠れていて写真にならず同じ個体。 撮影日の3月19日には夏羽に換羽していた。
 2羽とも成鳥。
  


F
ツクシガモ
 
2,010年2月、若狭町の水田に10羽のツクシガモが入って越冬した。個体によって外見がどう違うか見に
行ったけど、非繁殖期は雌雄が似ていてほとんど見分けられなかった。
 羽色の薄い第1回の冬羽と見られる個体が混じっていた。                                               
  



 2,010年3月 
 郡上市の郡上八幡の山間に夥しい数の
アトリが出ていると聞いて6日と8日の2回見に行った。
 日没が迫まってうす暗くなり始めたころにどこからともなくアトリの群れが集まってきて空を覆いつくした。
 その数10万羽とも15万羽とも・・・・。 上空をハイタカが多数飛んで背筋がぞくぞくするような光景だった。
 関東のテレビ局(局名は不明)が取材に来ていてインタビューを受けた。 名古屋では放映されなかったけ
ど、鳥友さんが映像を送ってくださった。 
 そう言えば犬山にタンチョウがやってきた時もテレビニュースでカメラを覗いている私の姿が放映された。
 最終的に50万羽という数も出たけど、どうやって数えたのかそれはちょっと多すぎると思う。
 ツバメのネグラ入りも数万羽になると同じくらい大興奮する。 とにかく凄かった!
 写真を撮ってあった。 黒い点は全てアトリである。 もう一度見たいな〜!

 

 

 



 写真が多いため入力に時間が掛かるようになったので次回はNO、2のページに続きます。




   
野鳥の特異年
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