サンカノゴイ
コウノトリ目 サギ科
英名:Eurasian Bittem
学名:Botaurus stellaris
絶滅危惧TB類(EN)
全 長 :76p
観察可能時期:東海地方では冬鳥 本州の繁殖地では留鳥
生 息 場 所:湖沼や河川・湿地周辺の広大な葦原
特 徴 :雌雄同色 芦原で活動し、魚類・両生類・昆虫・ミミズなどを餌にする。
昼間は葦原で休息しているか寝ていることが多いと各種図鑑では説明されている
が、昼間でも餌を探して活動していることが多い。
繁殖地を除くと稀なくらい少なく、葦の間で活動するため姿を見るのは難しい。
3月下旬〜4月に4〜6個の卵を産み、26日間で孵化する。 ♀のみで育雛して
8週間で巣立ちする。 幼鳥は成鳥に似るが色が淡い。
寿命は10年以下とされている。
類 似 種 :ゴイサギ幼鳥
中国からヨーロッパにかけてのユーラシア大陸中緯度帯で繁殖し、冬は大陸南部に渡って越冬する。
日本では北海道と、本州では千葉県の印旛沼が現在唯一の繁殖地とされている。
図鑑などでは滋賀県草津市の琵琶湖岸(下物・おろしも)で繁殖していると書かれている。 1985年に
繁殖が確認されたが湖岸の開発(烏丸半島)や護岸工事によって葦原が縮小したことから2,001年以
降は繁殖が確認されておらず、貴重な繁殖地が消滅してしまった。
しかし、本州にはサンカノゴイの繁殖に適した広大な葦原がまだ残されており、夜行性であることや鳴き
声が小さいことから発見し難いため姿を見かけることはほとんど無いが、意外なところで繁殖している可
能性が有るとも言われている。
以下の写真は2,008年の秋に豊中市の服部緑地公園に飛来したサンカノゴイである。 日によって
出現場所は違ったようだが、この日は公園の薄暗い樹下の草むらに出て太いミミズを地中から引っ張り
出して食べていた。
フェンスの向こう側にいたので一定以上に近付けなかったこともあってこちら側に屯する私たちを気に
する様子もなくゆったりした動作で地中の餌を探していた。
普段は葦原の中にいるものが白昼堂々と50人ほどのバーダーが取り囲む前に出てきたのは餌の関係
だろうか。
現地では幼鳥ではないかと言われていた。 その根拠とする所を聞き逃したので図鑑やネットで調べたが、
観察機会の少ない鳥だけあって長幼の識別点に触れたものは見付からなかった。
この個体は図鑑に掲載されたものより全体的に体の色が濃く脚の黄色味が強い。 もう一つ特徴的なの
は、回りに大勢のギャラリーがいるのに気にする様子もなかったこと。
他の場所で撮った写真と比較すると目先の薄緑色が特徴的。 繁殖期には婚姻色として目先が青くなる
ようであるが、11月のこの時期は繁殖期ではない。
以下 2,008年11月11日 豊中市服部緑地公園
頭と頬線の黒さが目立つ。
陽陰での撮影のせいか茶色の濃さが目立っている。
虹彩の色は透明感の無い黄色。
ただべたべたと写真を並べたのは動きが少ないから。 太くて長いミミズを口からぶら下げている写真を
撮った人もいるが私は撮れなかった。
2,010年の春先に湖北のビオトープの葦原で1羽のサンカノゴイが発見された。 大阪の公園ではの
そのそと歩き回っていたのと違ってこちらは葦原に隠れて全身は見えなかった。
警戒心が強く、こちらに気付くと葦に擬態してじっと動かなかったが、上半身は丸見えだった。 長い間見
ているのは気の毒なのでそうそうに離れたけど、見ている間に時々は動いていた。
2,010年3月19日 湖北町で撮影
頭は嘴の付け根まで黒味が強い。
2,023年から2,024年にかけての冬に東近江市の琵琶湖に注ぐ大同川の葦原で2羽のサンカノゴイ
が越冬し、日中から川岸の浅瀬の広大な水草の上で餌を漁るので大変な人気を集めた。
服部緑地公園の場合も同じであるが「夜行性のサンカノゴイは日中は姿を見せない」と、どの図鑑にも書
かれているこの稀有な行動は冬中続いた。
この2羽のうちの1羽は当日ネグラを離れなかったが、2羽とも川岸に出てきて餌を巡って争っていたこと
も有るそうだ。 近くでは撮れなかったけど、あの辺りにいると教えてもらえれば見付けるのは容易だった。
2,024年3月8日撮影
1
こちらは最初ネグラ近くの葦原で餌を探していたが、やがて餌場の川岸の水草まで飛んだ。 咄嗟の
ことでカメラが間に合わなかった。 羽を畳んでいるときの体の模様は複雑であるが、飛翔写真を見ると
初列・次列・肩羽・雨覆いの成り立ちが大体わかる。 後追いで僅かしか撮れなかったがラッキーだった。
降りた場所は目の前の川岸だったのでたくさんの写真が撮れた。 光線が順光だったので白っぽさが
際立っている。 現地では雌雄の識別に体の色の濃淡や虹彩の色を言っていたけど、私にはどちらも
差があるようには見えなかった。 前に見た2羽と比べて頭の色が薄く、日中飛び回ったり餌場に出てくる
のを見ると幼鳥かなとも思う。 警戒心も薄く、20mくらいの距離にカメラマンが三脚を立ててもまったく
警戒しなかった。
この角度から見ると頭の黒い部分は嘴の前で明らかに色が薄くなっている。 雌雄の識別について
♂は繁殖期には独特の鳴き声で鳴くそうで、現地ウォッチャーはその声を聞いて識別できているのかもし
れないが、そこまでは確かめられなかった。
頭の色は後頭部で濃くなっている。
頬線は薄くてあまり目立たない。 虹彩の色は黄色。
こんな環境で餌の魚を探していた。 ブラックバスを食べてくれれば大変な益鳥だ。
記:2,008年11月19日
2,016年 2月16日 改定
2,024年 3月23日 改定
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