オオハシシギ換羽観察記(2,019年3月15日~4月15日)


 2,019年の1月に1羽のオオハシシギが撮影された。  時期的に越冬するのではないかと見られたので時々探してみたけど見付け
ることは出来なかった。  撮影された写真を見ると第1回の冬羽に見えたけど判然としない。 

 偶然に見付けたのは3月15日である。  この時には換羽が始まっていたので取りあえず写真を撮り、見ている人がいるかどうか暫く
様子を見ていたけど、露出度が低いせいか他にはおらず私だけとわかった。 

 これまで越冬シギの換羽してゆく過程を観察する機会は全く無く、1羽だけなので個体識別のいらないのも幸いした千載一遇のチャンス
 なので一人で換羽してゆく過程を観察・記録することにした。 そして2~3回通ううちにおおよその行動のパターンを把握した。

 観察を始めると意外と露出度は高く、光線状態は常に良く、車中にいる限り警戒心はまったく無くて眼前まで寄ってくる。
 時には探しているらしい車が来ることが有ったのでそんな時は見付けやすいように場所を譲ったけど、見付けられたかどうか・・・。
 観察できたのは3月15日から4月15日までの1ヶ月間。  その後は農作業が始まったのを嫌って行方不明になってしまった。
 換羽が未完だったのでとても残念だった。

  写真は右側と左側で換羽の様子が違うので比較できるように両方を掲載した。  

  3月15日
  僅かに脇腹に赤い色と、背中に濃い夏羽が見られて換羽が始まっていた

    


  羽の成り立ち(3月29日撮影)
  順番が前後するけど羽の成り立ちについて復習しておく。  主翼を構成するのは翼後縁の初列風切り羽・次列風切り羽の風切り羽で、
 その上に外側から初列雨覆いと大雨覆いが翼の付け根までかぶさる。

  その上を中雨覆いが覆い、更に小雨覆いが被さって翼前面に至る。 主翼を構成するのは風切り羽と雨覆いだけ。 この羽を大きく
 広げている写真を見ると構造がよくわかる。 両翼の付け根から背中にパラパラとたくさん有る羽は肩羽でかなり換羽している。

  風切り羽と初列・次列雨覆いは夫々1列であるが、小雨覆いは複数列になっていてたくさんある。
  3月29日時点の写真を見ると赤く換羽しているのは中雨覆いと小雨覆いと肩羽の一部であることが見て取れる。 
  
             



  3月18日
  主翼は肩羽の下にたたまれるので羽をたたんだ時に見えるのは肩羽が大きなウェートを占めており、あとは大雨覆いと中雨覆いなど
 雨覆いの一部である。  この日には15日と比べて赤い羽が増えているが、これは肩羽と雨覆いである。
  換羽は羽をたたんだ時に見える場所から始まり、風切り羽はまったく換羽していない。 
 
    


  3月24日
  18日と比べて更に赤い羽が増えている。 この時点では羽を広げた写真まで換羽していない。 小雨覆いと中雨覆い・肩羽の一部だけ
 でこれだけ赤く見えてくる。  下面でも脇と下腹部の赤味が増している。
  
    
 

  3月27日
  羽を広げた日の写真で、羽をたたむとこんなふうに見える。  風切り羽と大雨覆い・初列雨覆いはまったく換羽していないが、ここでは
 初列風切り羽の先端しか見えていない。
   
    


  3月29日
  二日前の3月27日と大きな違いは見られないが、印象的にはずいぶんと赤くなってきている。
   
    


  3月31日
  常に滞在している蓮田の隣でレンコンの収穫が始まり、水ポンプの大きな音や人の動きを嫌って場所を変えた。  飛んだ方向を見てい
 たのですぐに見つけたけど蓮の枯れた茎が乱立していて見難くなった。
 
    


  4月3日
  この日は目の前まで寄ってきたけど、間近で撮影できた最後の日となった。  上面の換羽はなかなか進んでいないが、胸から下腹部に
 かけての赤味が増して換羽が進んでいる。 
  
    


  左側後部から撮影した写真である。  下面はほとんど換羽が終わっているように見えるが、肩羽にはまだ冬羽が残っている。
                      
   


  4月6日
  田んぼの水が減って行動範囲が狭くなり、眼前に来ることが無くなったの大きくトリミングしてある。

    


  4月8日
    


  4月12日
  この頃にはますます水が少なくなり、茎の間に見えていても写真の撮れる場所に移動してくれるまでの待機時間が長くなり、地元車に迷惑
 を掛けたこともあった。
  下面は4月3日の後ろからの写真ほど赤くは見えないけど、特に右側では肩羽に残っている冬羽が目立っている。
   
    


  4月15日
  ますます水が減ったこの日は特に動きが少なく、2時間以上待つも全身が撮れる場所にはついに出てこなかった。
  翌日または翌々日、すぐ隣の水田にトラクターが入り、それを嫌って居場所を変えてしまった。  20日に撮影されているので近くにいたよ
 うであるが、田植えなど農作業が頻繁になったのでそれ以後の行方はわかっていない。
  左サイドは肩羽の冬羽はほとんど抜けているように見えるが、右サイドではまだ少し残っている。  あと1週間もすれば換羽が完成するのに
 残念であった。 
   
    


  2,007年5月4日撮影のオオハシシギ夏羽である。  観察してきた個体と違って顔まで赤くなってほぼ夏羽が完成している。  尾の方に
 見えている初列風切り羽は変わっていない。  
  こうなるまで観察したかったけど見付けられていない。  最近の蓮田周辺はひところより農作業が盛んになっており、シギチの渡りの頃は
 一際賑わっているのが立ち寄りの少ない原因の一つになっているのではと愚考している。