ミヤコドリ        チドリ目  ミヤコドリ科    英名:Eurasian  Oystercatcher         
                                     学名:Haematopus ostralegus   

   全  長     :45cm  雌雄同色
   観察可能時期:冬鳥として9月〜4月。  飛来地は限定されて個体数は少ないが、近年は三重県の海岸で
             越夏する個体が見られる。
   生息場所    :海岸の干潟・砂浜、河口干潟、岩礁など 
   類 似 種   :類似種はいないので識別は容易

 日本にやってくるのはカムチャツカから中国北部〜カラフト周辺で繁殖し、中国南部の海岸地帯で越冬する個体群と
思われるが、日本海を越えるのが億劫なのかわが国への飛来数は少ない。

 東京湾の三番瀬・三重県の津市から松阪市にかけての海岸・下関市の竹ノ子島・福岡市の和白干潟などが越冬地と
知られており、その中でも三番瀬は最大の越冬地とされている。

 東海地方では津市の志登茂川河口を中心として近年越冬数が40羽程度と増える傾向にあり、鈴鹿川の河口で夏を
越す個体など三重県の海岸では夏に観察されることがある。
 このように近年三重県では越冬個体が増えてきているが、越冬地以外での観察記録は少ないようだ。

 冬羽の写真を掲載するつもりで在庫を探したが意外に撮ってなかったのは越冬する津市の海岸では鳥たちとの距離
が有りすぎるせいだろう。  ミヤコドリの冬羽と夏羽では冬羽で嘴先端が若干黒ずむ程度で大きな変化は無く、むしろ
成鳥と幼鳥・若鳥との羽衣の変化が大きい。

 写真は2,007年3月9日に津市で撮影した個体だが、繁殖時期を間近に控えた夏羽だろう。   嘴が鮮やか
なカーキ色となり、背中が黒いので成鳥と判断される。
                       
 2,007年3月9日  津市で撮影
         


  2,007年の夏に鈴鹿川派川河口でミヤコドリが2羽夏を越した。 嘴の先端が若干黒く、背中の色が褐色味を
 帯びているのでまだ未成熟な個体である。
                      
 2,007年7月24日 鈴鹿川派川河口で撮影
         



  2,008年の夏は17羽のミヤコドリが鈴鹿川・派川の河口干潟で夏を越した。  繁殖入り前の若い個体は群を作って
 放浪する傾向が有るようだが、17羽の中には成鳥も混じっていた。 
 17羽もの成鳥を含めた群が夏を越そうとしているのは興味深いことである。
 
 ミヤコドリはあまり人を恐れないので静かに待っているとかなり近くまで寄ってくる。 
 このミヤコドリは背中が真っ黒で嘴が先端まで鮮やかなカーキ色をした成鳥である。
 本来なら繁殖地に行くべき個体と思うが、この時期に越冬地にいるのは不思議なことである。
                     
 2,008年7月20日  鈴鹿川派川河口で撮影    
         
  


 日本に飛来するのはユーラシア大陸系のミヤコドリに分類され、さらにヨーロッパからロシア西部で繁殖するものと
カムチャツカから中国大陸東部で繁殖するタイプに別れる。   ヨーロッパタイプのものの冬羽は首に白いバンドを持ち、
若い個体も持つようだ。 
 日本にやってくるのはカムチャツカタイプだが、派川河口にうっすらとホワイトバンドを持つものがいる。 
 ヨーロッパタイプのようにはっきりしておらず、胸の黒い部分がヨーロッパタイプより小さいのでカムチャツカタイプであり、
白いバンドが鮮やかにはっきりしてくることは無さそうだ。
 上野動物園で飼育されているミヤコドリの写真を偶然に目にしたら同じように薄いホワイトラインが入っていた。 部分
 白化というわけでもなさそうだが、ちょっと気になった。 嘴が若干黒く、背中の色も茶褐色を帯びているのでまだ未成熟
な個体である。
                    
 2,008年7月20日 鈴鹿川派川河口で撮影     
         


                  2,008年8月13日  3羽増えて20羽になっていた。
            


 三重県のミヤコドリは鈴鹿川河口・鈴鹿川派川河口・安濃川河口・雲出川河口及びそれより以南の海岸で越冬することが
多かったが、
2,012年の秋には四日市市の高松海岸でも見られるようになり次第に数が増えていった。
 ミヤコドリは三重の海岸を行ったり来たりしながら越冬するようになり、総数は100羽をはるかに超えるようになった。
 鈴鹿川派川河口は四日市市の汚水処理場の能力が強化されて河口干潟の汚れが酷くなってからシギ・チドリを始めとして
鳥たちの立ち寄りが少なくなった。 何故伊勢湾に直接流すようにしなかったのだろう。

 2,021年の秋にはT7の標識を付けた個体を高松海岸で観察した。 2,019年7月5日にカムチャツカ半島西岸のハイ
リュゾヴァ・ヴェロゴヴァヤ河口付近で3羽の雛に足環とフラッグを付けたそのうちの1羽である。
 1羽は捕食され、T6の標識を付けた個体は三番瀬に飛来。 T7はその年の9月27日に津市の河口で観察されている。 

 T7は翌年にも三重の海岸で観察されているので今回で3回目の飛来になり、県南部でも確認されている。 
 T6は2,021年5月まで三重の海岸で観察されているが、釣り糸が絡まっていたので落鳥しているのではないかと懸念され、
2021年6月以降は行方が分かっていない。
 高松海岸では足の無いミヤコドリも観察されている。 
  
         








                          記:2,008年7月23日
                             2,008年8月13日
                            2.021年12月10日 更新
 

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