ヒクイナ雛・成長観察記     2,010,8,18
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 7月の初め、名古屋市の池でヒクイナが子育てしており、そろそろ雛が出ているらしいと噂を聞いた。 
 かってセイタカシギの繁殖を観察したように、水際の鳥たちは孵化すると自分の足で動き回って餌を採るので成長過程を観察す
るのはとても面白い。
 ましてやヒクイナの繁殖となると観察機会が少ないので継続して観察することにした。  ただ、現地までは距離にして40km、
1時間半近く掛かるので5回しか行けなかったのは残念だったが、観察者が少なくて写真が撮りやすかったのはラッキーだった。



 7月2日(金)
 現地で「雛が出ているようで写真を撮った人もいるらしい」との話を聞いた。  親は葦原から出てきているのを見たが、近くに雛の
姿は無くこの日は見られなかった。



 
7月11日(日) 曇りのち雨
 初めて雛の姿を見た。  親と一緒だったが親の警戒心が強くて写真を撮らせてくれず、また雨が降ってSSが上がらなかったの
で撮った写真も散々だった。 
 左側の写真の右端に親鳥の体が半分写っている。  後ろから追いかける雛がかなり大きいので孵化してからかなり日数が経って
いそうだ。   伸びかけたばかりの風切羽を精一杯広げて親の後を追いかける姿がユーモラスで可愛かった。

 数年前に関東でシロハラクイナが2年続けて繁殖したことがる。  その時の雛の写真と同じようにヒクイナの雛も真っ黒な色をして
いた。     
  
 雛の数は5羽と確認されており、私も同時に5羽見る事ができた。



 7月15日(木)  曇り時々晴れ・または雨
 昼前に現地到着、昼過ぎからちょこちょこと姿を見せ始めた。   残念ながらこの時点でボサボサの産毛がかなり抜けてしまって
おり、頭と後ろの方にしか残っていなかった。 肉眼で見ると真っ黒に見えたが、写真にしてみるとこげ茶色の部分が多い。
 嘴の付け根と先端が白く、風切羽は申し訳程度。  足はバンの雛と同じように体と比べて巨大だ。

  

  カメラの位置が近いにもかかわらず親の警戒心は比較的薄く、この時は長い間目の前で羽繕いをしていた。 
              

   親に付いて出てきた雛。  餌を貰おうとしている。  
   餌は雑食性で魚・昆虫・木の実など何でも食べる。              水浴び中の雛。  動作は一人前だ。
  
  



 7月21日(水)晴れ
 10時頃現地着。  親と別行動になったせいか、幼鳥によく見られるように警戒心が薄い。 カメラが気になると一目散に逃げること
もあるが、ギャラリーが少ないせいもあってこちらが移動してもあまり気にしなかった。  左の写真は太陽を浴びていて茶色に見え、
右の写真は葦の中で黒っぽく見えている。  光線の具合によって見え具合が違う。

   
 
 風切り羽を広げてエンゼルポーズ。 上の写真を見るとかなり    
伸びてきているように見えるが、飛べるまでにはまだまだ時間が   頭と尻尾の方に黒い産毛が残っていて随分とユーモラスだった。 
かかりそうだ。                                 上の2枚や左の写真ではここまで見えていない。

  


   江戸時代の月代のように見える。  面白いので2枚写真を追加。  光線の具合では真っ黒に見える。 ひょっとすると体全体に
 まばらに産毛が残っているのかもしれない。 
  
   



 7月26日(月) 晴れ
  五日前と比べて随分と大人っぽくなってきた。  頭と尾の方に見えていた黒い産毛がこの写真では確認できないが、肉眼で見た時
は相変わらず体全体が黒く見える。  嘴の白い部分がすっかり小さくなって喉の下が白くなり始めている。
 産毛は親が抜いてやっている・・・と聞いたがこの日は親が姿を見せなかったのでそんな場面は見られなかった。 
 
  

  これもエンゼルポーズと言うのだろうか・・・5日前と比べて風切羽が伸びている。  6月下旬頃の孵化と見られるのでそろそろ
 1ヶ月になるが、もう雛というより立派な若鳥の印象だ。 
 
           



 8月6日(金) 晴れ
 都合により現地到着は昼過ぎになった。  暑い日で観察している人はいなかったが、暫くしてやってきた人の話では「大きくなって
警戒心が強くなったのでなかなか出てこない」との事だったが、しばらく待っていたら2羽で姿を見せた。 
 前回の10日前と比べて随分とヒクイナらしくなっている。  風切羽も飛べるくらいまで伸びているようだ。
 
  

  
 警戒心が強くなったが2羽で出てくるとリラックスしてしばらく遊んでいくとの事。 
 2羽で現れた幼鳥の1羽がもう1羽の頭をつつきだした。  別に苛めているわけではないらしく、つつかれている方は気持ち良さそ
うにじっとしている。
 ここで親が雛の産毛を抜くという話を思い出した。  写真では見えないが幼鳥どうしで産毛を抜きあっている。 まるで猿の毛づく
ろいのようで面白かった。  珍しい光景を見たものだ。

  

 上の写真とは逆に奥側の幼鳥がこちら側の幼鳥の頭の羽の中に嘴を突っ込んで羽繕いをしている。  
              


 もう一つよく見えていないが、やはり風切羽は伸びている。 嘴の白い部分はまったく無くなり、目つきが鋭くなった。
              

 
 親子の比較写真。 頭から胸・脚に赤みが無いだけで羽の色はよく似てきた。  親が姿を見せないので並んだ姿は見られず、大き
さの比較が出来ないのは残念だが、足の大きさから推測すると親よりまだ小さそうだ。
大きさは親に及ばないが孵化から1ヵ月以上過ぎてほぼ幼鳥が完成しているのかもしれない。
 以前セイタカシギの繁殖を観察したとき、孵化から32日目には達者に飛んでおり、ほぼ幼鳥が完成していたのが思い出される。

 この後、一冬を過ごして来年第1回夏羽に換羽するころは体の赤味が増えてくる。 
  
                 若鳥                                    親鳥
  


 人の少ない早朝・雨の日や曇りの日・午後より午前中が出やすいかと思ったが、かんかん照りの午後からでも直射光の射す中に
よく出てきてくれた。  季節が進むに連れて草丈が伸び、次第に写真が撮りにくくなっていった。 
 撮影には機動性の高い400mmAFレンズを使い、ピントとブレを最小限に抑えるため三脚を使用した。 
 



                               記:2,010年8月19日

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